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第6話 - ①
諸刃の剣
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「おい、神谷大丈夫か?」
この状況をどう見たら大丈夫に見えるのか
退けろ、そう言いたいのに‥
「ぁ‥、耳‥やめ、ろ」
口から零れる言葉は、なんと弱々しい事かと
自分自身、嫌気がさす
乃木は乃木で…
「耳?耳が痛いのか?」
勘違い甚だしい間違いを口にし、耳の輪郭をなぞり出す
その途端、全身に甘い電流が走り乃木の熱い指先に感じてしまっていた
「ひッ…、ン、んッ」
「おい、神谷」
「‥触る、な‥‥ぁ」
一瞬、耳から離れた指先
だったが‥‥
「な!~~ッく‥て、めぇ」
今度はその動きが目的を持つ
「やめろ‥‥ッ」
「お前、耳が弱いんだな?それも破滅的に‥これはひどいな」
「ん、、‥‥クソッ」
「いや、違うか?弱いんじゃなくて‥‥良すぎるんだな。やたら隙が無いのも、その場に居ないお前が全部分かっていたりするのも気にはなってたが‥…この耳のせいか?」
「ーーくッ」
(コイツ!!)
俺を見下ろす男前の面がさらにニコリと笑う
完璧にバレた
ガキの頃から聴力が異常に良かった
離れた場所からでも、音を捕らえる聴覚は、ボリュームを上げる様に、はっきりと聞こえる
囁き声、足音、人の動作
俺を待ち伏せする輩の計画なんてものは、気が削がれるほどの筒抜けよう
情報が常に聞こえる俺には
馬鹿みたいに人数だけ集めた奴らを
一人でもノす事は簡単だった
その反面
自分の手以外、一切受け付けないほどに敏感過ぎる耳
触られれば今みたいに
力が抜けて、有りない醜態を晒してしまう
この弱点は誰にも知られる訳にはいかなかった
なのに…
初めて乃木と会った時
乃木から発せられる音が極端に少ない事に、すぐ気付いた
足音を立てない歩き方
無駄のない動き
気配まで消してあきらかにただ者じゃない
コイツは関わっちゃいけない危険だ、と
突然後ろにいる時、簡単に腕を掴まれた時に何度そう思ったか
俺に絡んでくる不良グループより、尻をまさぐるセクハラ大王の市より
どんな奴よりも警戒していた
していたのに‥‥
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