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⑧
「兄貴は‥」
何でコイツなんかに…
「‥‥兄貴は‥‥好きな奴いんだよ!!
あんなメガネ野郎でも‥‥俺は、弟としか映ってねェ、ッ悪ィかああ、そうだよ!
俺は兄貴が‥‥好きで、ずっと好きで、早く諦めねぇといけねぇぐらい、てめぇ自身でも分かってやがるんだ!こんな想いは‥」
もっていちゃいけねぇ‥‥
実の兄弟で、男同士で、ヤバいって事ぐらい最初っから‥‥
誰にも言わずにいた本音を
何で俺はコイツなんかに…
「‥‥ッ、く‥そぉ‥っ」
「神谷、泣いてるのか?」
「泣いてなんか、ねぇ‥‥」
そうは言っても、止まる事なく目からは
涙が零れていた
人前で泣くなんて事はいつぶりだ
そもそも泣く事すら数える程度しかなかったから
もう止め方なんてモノは忘却の彼方
「そうか‥‥辛かったな、神谷」
「~~つッ」
「ずっと頑張ってたんだな」
暖かい手の平がクシャと、俺の前髪をかき上げる
そしてその先にあるのは
優しく微笑む男前の面
その目が、俺を見る乃木の目が‥‥
(兄貴と‥同じ、だ)
「~~く、」
周りの奴らが俺をどう見てようが、兄貴だけは俺を信じて、守ってくれてた
女嫌いになったあの時も、兄貴は
『サイがそんな事する訳ねーよ!』
大人達が俺を責めていても、庇ってくれた
その兄貴とおんなじ目をしやがって
優しい言葉なんか掛けるな
抵抗する気が‥‥
起きねぇだろーが‥
乃木の野郎に抱きしめられているのに
暖かくて、落ち着くなんてこんな馬鹿な話し、有り得ない
「うるせぇ‥‥俺、俺は‥‥ッ、つ、」
「我慢するな、付き合ってやる」
「何で、テメェなんかに‥‥クソ‥‥‥ぎ‥乃木‥乃木!」
兄貴を好きになった事に後悔なんてモノはない
でも、ずっと溜めてた事を
誰かに言えた安心感
聞いて、それを受け止めて貰えた安堵感
コイツは馬鹿にも軽蔑もしないで俺を‥‥
見てくれた
(乃木‥‥)
思わず手が動いていた
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