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第10話 - ①
墓穴
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怠くて、眠ィ‥‥
「‥イ、サイ‥‥サーーイ!!」
「うわッ、あ、兄貴!!?」
「大丈夫か?ポヤンッてして~~」
俺の顔を覗き込むように、心配そうな顔の兄貴がすぐ目の前に居た
(あ‥‥ここ、居間だ‥)
こんな近くに兄貴が居たのに、気が付かなかった俺は、どうかしてる
えーと、確か‥
あいつん家から逃げるように帰ってきて
すぐさまシャワーを浴びて、少し気が紛れたのと怠い体をソファーに沈めて、そのまま‥
時計を見てかなりの時間が経っていた
「なぁ、サイ大丈夫か?唇痛ェのか?」
「え?」
何で兄貴がそんな事を言うのか?
そう疑問に思ったら‥‥
「さっきから指で摩ってるからよ」
「……へ?」
「あっ!慌てて熱いモン食ったんだろ~!
火傷なら、氷食えば治るんじゃねーかな?」
兄貴に言われて、無意識に口に手を持っていっていた事に気がつく
なんだろう…
なんか感触が…‥
ゆっくりと触れる柔らかい感触
ゾロリとなぞられ唇の隙間から差し込まれる舌が熱くて…
『神谷‥‥』
低く囁くような声が‥
ずっと頭ん中で…
「~~~ッ、あ〝ーーークソッ!」
「さ、サイ?」
バクバクとまた心臓が痛いぐらい速くなる
‥‥ッつ!
何だよ、これ?
ジリジリしやがる
「あ、ああ兄貴!俺、寝るわお休み!!」
「へ?おう、お休み~」
そうだ
早く寝て全部あんな事は忘れる
乃木の事なんか
あいつにされた事なんか
気持ちイイと思っちまった事なんか‥…
気持ちイイ?
「ぐぁああああああッ」
布団を思いっきり殴り、枕を投げ飛ばし、物に当たる事しか出来ない夜は更けていった
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