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第十五話

【土曜日の朝】 目が覚めるとそこは見慣れない天井だった。 暖かい。いつも目が覚めると不安と恐怖を感じていた。あの男はいないのに...眠ると必ず昔の夢を見る。だから寝ることは好きではない。それなのに今日はなぜかいつもの夢を見なかった。こんなすがすがしい朝を迎えたのは初めてだ。 「ここは、どこだ…。はっ!そうか俺は昨日大神の部屋で...」 まだ頭が覚醒していないせいか自分があのまま大神の部屋で眠り、朝を迎えたことを理解するのに時間がかかった。ふと右隣に人の気配を感じ横に顔を向けるとそこには静かに眠る大神がいた。 「な、なんで隣に…!」 俺はこんな男の隣で熟睡していたというのか。体調が悪かったからといっても相手はあの大神だ。何をしてくるか分かったもんじゃないのに。 「…ん。ああ、おはよう律」 俺が声を上げたからか大神が目を覚ましてしまった。 「なんでお前が俺の隣で寝ている!」 そう叫ばずには居られなかった。自分を強姦した相手と一緒にぐっすり眠ってしまった恥ずかしさ、そして今日このベットで、大神の隣で眠って俺が感じたことは__安心感… 「何でって、ここはぼくのベットだからね。病人を起こすのは悪いかなと思って一緒に寝ることにしたんだよ」 「そ、そうなのか...それは悪かった」 「悪かった?違うよね。こういう時はなんて言うか、わかるでしょ?」 「あ、えっと...あ、ありがと?」 「うん。よくできました」 そういうと大神は俺の頭を優しくなでた。こんなことされたことがないから、本当に調子が狂う。 「朝ごはんどうしようか。まだ体調が悪いなら食堂でこっちで食べれるもの用意してもらうけど」 「いや、大丈夫だ。自分で食べに行く。世話になった」 ベットから立ち上がり一度着替えようと自室に戻ることにした。これ以上大神の世話になるわけにはいかないし体調もずいぶんよくなった。これならもう平気だろう。 「あ~あ、熱で火照った律かわいかったのに」 「は?」 「いつものまじめな佐々木君に戻っちゃった」 「な、俺はかわいくない!それにこれが本来の俺だ!いつまでもお前の好きにはならないからな。それと、昨日は助かった...今後こんなことは起きないようにする。それじゃ!」 俺は逃げるように大神の部屋から出ていった。

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