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コールドケース その 2

この15年で35人もの子供を1人の手で 行方不明にしてきた。 岳人に続き2人目の女の子がこの子だ。 デパートで迷子になってた2歳児だった。 親が目を離した一瞬の隙を見逃さず、 1晩置かずに依頼者に渡す。 岳人の時のように連れ回す方が危険を伴う。 最初の頃こそ防犯カメラなども少なく 仕事がしやすかったが、最近はなかなか 難しい環境になりつつあった。 合計で35人。 年によっては、1人も出来ない年もあった。 その方が世の中のためにもなる。 悲しむ家族が減るのはいいことだ。 なぜ、こんな仕事を始めたのか…… 最初は金だった。 家庭の事情で手っ取り早く金が欲しかった。 だから、最初の2年間は、かなりの人数を 連れ去っていた。テレビカメラの前で 泣く母親、必死にチラシ配りをしているが 家族やその友人…… その中には家族を誹謗中傷するものもあった。 ちょっと目を離した隙を狙ったのはこっちだ。 家族にヘイトが向けられるのは間違っている。 ただ、それを訴えてしまえば、自分が危ない。 本当に間違ったことをしてるのは自分だ。 わかってても、それを止めることは 出来なかった。 ハイリスクハイリターンの仕事は、 若い自分にとってもスリルを 味わうことが出来た。 本当に若かったんだと思う。 若かったでは済まされないことを たくさんしてきた。 今更、何をしても償えないことも わかっている。 全てが明るみに出れば、 死刑は免れないだろう。 それだけのことをしてきた。 それだけのことをした。 まともな死に方はしないだろう、と思う。 生きてたら17歳になる彼女は どうなったのだろう? どこかの裕福な家に引き取られて幸せに 暮らしてれば良いな、などと 感傷に浸るようではこの仕事は引き時だ。 家でしか吸わないタバコの煙を薫ゆらせる。 部屋や服に臭いがつきたくないので、 ベランダに椅子と灰皿を置いて吸っている。 ーー今夜は星が綺麗だ…… そんな夜を楽しめるのも あと数日だということも 知らずに、ゆったりとした時間を 楽しんでいた。

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