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コールドケース ♾ ケント 1

目が覚めるとキングサイズのフカフカのベッドの中にいた。30帖はあるのではないか?という広い部屋だった。どこかで、香が焚かれてるらしく、甘い香りが漂っている。 全身に残る倦怠感と後孔の痛みで、この国に着いて直ぐに自分に起きた現実を実感していた。 このお香もヒーリングのつもりなのだろうか? 出張と言われてきたイタリアのはずなのに、 <永住>を突きつけられた。往復分の航空チケットをもらってきたわけじゃない。 最初から仕組まれていたものだ。 もう、日本に返すつもりは無い、とはっきり 言われた。帰る家も処分された。 それ以前に晒した痴態だ。 媚薬を盛られていたとはいえ、男を受け入れて自分の声とは思えないほどの甘い声で喘ぎ散らし、あんなに淫らに乱れるとは思わなかった。 「……15年……大人なになった……か……」 当時は6歳の岳人だったが、今は21…… 「……色んな意味で立派なもん持ちやがって……なんなんだよ……」 「それは褒めてもらってるのかな?」 思いもよらない方向から声がした。 岳人……いや、サルヴィオだ。 「まぁ、そりゃ、僕もずっと子供のままではいられないよね?けど、大人になって良かった、とも思ってるよ?」 ――あれだけ絶倫なら、そうだろうな…… 「おまえ、なにがしたいんだ?」 素朴な疑問だった。自分はあの頃のような若さと勢いはない。スリルを味わうには年齢を重ねすぎている。 「なにって別に不思議なことはしてないよ? あの時のケントとの約束を果たしただけだけど?言ったよね?また、会おう、って。」 「……どうだったかな。」 少し離れた位置にいるサルヴィオは横目でケントを見てから、 「僕はね、その言葉を支えにここまで生きてきたんだよ?どんなに挫けそうな時でも、ケントに会いたい一心で地を這うような努力を重ねてきたんだ。ケントがいなかったら僕は……」 萎らしい姿はこの男らしくない、と思う 「でも、ケントがすごいおっさんになってたらどうしよう……っていう不安はあったかな。 でも、変わってなくてホッとしたよ。僕はね、初めて会った時からケントが好きだったんだよ?知ってた?だから、再会するために頑張ったんだよ?言ったでしょ?お風呂で裸を見た時に、今みたいな躰だったら抱いてたって。」 萎れてたと思ったら、即、笑顔に戻る。 その笑顔の仮面の下には色んなことがあったんだろう……今更ながら自分がしたことへの後悔が生まれてくる。他の子供たちはどうしているだろう……? 「……僕以外のこと考えてるね?それは妬けるなぁ……中には女の子もいたよね?その子たちでも抱きたくなった?」 「……おまえ……さっきから、なにふざけたこと言ってんだ?セックスのことしか頭にねぇのかよ……」 「そんなことはないよ?ただ、ケントが相手だったら、セックスのことが多いけど、純粋に僕と同じくらいケントが僕を好きになって、愛して欲しいだけだね。」 最初から歪んでいたのだ。 「ケントが子供の頃にも言われてたでしょ?『知らない人には着いていっちゃいけません』って。僕だってそうだったよ?でも、好みだったからついてったんだよ?」 「おまえなぁ……それじゃナンパと同じじゃねぇか……」 「ナンパってなに?」 「簡単に言えば、男に飲みに行こ?とか、今ヒマ?とか声掛けられて、好みだったかり、それ待ちだったらホイホイ男に着いてくことだよ」 「あ〜まさにそれだ。この人と暮らせるなら、別に親はどうでもいい、って思ったからケントについて行ったのもある。それは今でもね」 「でも、お前の親はまだ、諦めてねぇよ? たまにテレビでもどこに消えたのか?ってニュースで流れたりしてるし、チラシを配ってたり必死に探してる。オレが言うのもなんだがな」 「死んだと思って諦めてくれてもいいのにね」 ぶん殴りたい……と思った。 けれど、その状況を作り出したのは、紛れもなく自分自身だ。 殴るなら過去の自分だ。 でも、あの時はあぁするしか無かった。 「ケントの事情も知ってるよ? でもね?今、ケントが日本にいても、ずっと犯罪者のままだ。僕の元で心機一転するのも方法じゃない?足を洗いたいなら、尚更ね……」 ゆっくりと歩みを進めて、ベッド脇に腰を下ろす。薄暗くて見えなかったが、岳人はバスローブを纏っていた。 顎を取られてチュッと口付けられる。 「僕はね……最初から自分の意思だったんだよ?ずっと愛しているんだよ?ケント……」 また、口唇を押しつけられて舌が口腔内に入り込んで暴れ出す。艶を含んだ深い口付けになんで自分が流されてるのかがわからなかったが、そのキスが気持ちいい、ということだけはわかった。12歳も年下の男に良いようにされてることが気持ちいい、とは…… 「ケントも感じてるんだ……嬉しいなぁ……」 キスを続けながら、直に自身を握られる。 「……んふっ……!?」 ビクッと躰が跳ねる。寝そべってただけだから気づかなかったが、ケント自身は裸でベッドにいたようだ。もう、快楽の蜜を流し始めていて、くちゅくちゅと音を立てながらサルヴィオの手の中で緩急つけて扱かれると腰が揺れる。 キスをしかながら扱かれると腰の奥がチリチリと残り灯が燃え上がるようなムズムズした感覚が甦ってくる。 ――なんで……こんなにコイツとのキスは気持ちいいんだろう……? バスローブを脱ぎながらベッドに入ってくるサルヴィオを両手で首に手を回し、そのキスに酔った。

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