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Considerazione(考察) 片野 1
「良い表情 をするでしょう?」
サルヴィオはうっとりした顔で言う。後ろの秘書軍団も目線を逸らしたり、窓際に避けてる男性もいた。片野の隣の時田もどうやら反応してしまったらしい。モジモジしている。
時田はまだ、片野や健登よりも若い分、反応もいいのだろう。
「……先輩、やばい方向に目覚めそうです。」
「……忘れろ。相手が悪い。」
片野は眉間を指で抑える。
――須上は日本であれだけ目立たないように生きてきて、今回のイタリア行きも渋ってた。なのに、なんでこんなことになっているだ?
そもそもジョルダーノとは面識はないと、喫煙所では言っていた。それが出張半月で退職願を郵送してきたり、ジョルダーノのそばにいなければいけない、という謎の義務感……
片野には分わからないことだらけだ。
――もし、サルヴィオ・ジョルダーノが偽名だった場合は……? 日本人だとしたら……?まさかね……
当たっている疑問に否定という蓋をする。
日本人からしたら、子供を誘拐しての人身売買や臓器売買などご法度だし、非現実的だ。
そもそも警察が嗅ぎつけないわけがない。それを見逃されていたのだとしたら、警察も汚職まみれということだ。それは信じたくはない。
年間の行方不明者はかなりいる。だが、帰宅する場合もいれば、不幸な形で発見されることもある。発見さえなく、時間だけが経過した未解決の行方不明事件など、多々あるのだ。
――そのうちの一つだとすると、須上は誘拐犯ということになってしまうのでは?
15年を遡れば、まだ、サルヴィオ自身がまだ、子供のはずだ。須上であっても20歳未満の未成年のはずである。その2人に接点があるとすれば、どこなのか、皆目検討がつかない。
最低でも10歳は年が離れているはずだ。
そんな2人の接点があるとしたらなんだろう?
近所に住んでいた?家庭教師をしていた?
それとも、須上が、誘拐犯なのか……?
――いや、そんなことをする度胸のある男ではない。いつもオドオドしていて、子供相手にだってバカにされそうなほどの男が果たしてそんなことができるものなのだろうか?
サルヴィオは15年前に日本で生活をしたことがあると言った。果たして、イタリア人としてなのか、日本人として、なのかにもよってくるだろう……
確かにサルヴィオ・ジョルダーノは見た目は日本人と変わりないが、三揃えのスーツが似合うほどの筋肉をそのスーツの下には隠されているのは見た目にわかる。日本人としての体型としては、須上が理想的な体型と言えるだろう。
その腕の中にすっぽりと須上は嵌 ってしまうのだ。日本人でも作れない体型ではない。
けれど、相当な筋力トレーニングや制限が必要となるだろう。ボディービルダーがいい例だ。
サルヴィオが須上に執着していることは、先程の行動でわかる。取引先相手の前で、同性で年上である須上に本気のキスをして、須上は立てなくなるとぼの骨抜きにされている。
本来であれば、自分の秘書と会社を運営している人間のそんな行動など、見せるべきではないし、取引先を招いている席ですることでもないがサルヴィオは躊躇なくそれをした。その意味を図り兼ねる。
さらに言えば、秘書達が数人いる中で、そんなことをする意味……中にはボディーガードのような屈強な男も含まれている。
周知のことなのだと知れる。
しかも、短期間で、そうなのであれば、彼らは常に一緒に行動しているということになる。
須上を問い詰めようにも、サルヴィオにベッタリくっついてる状況では難しいだろう。
1人だけ冷静にその光景を見ていたサルヴィオが口を開いた。
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