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クリミナルアクト ♾ サルヴィオ 14

ケントは何かに行き着いたようだが、それを肯定したくない、という状態になっているようだ。だが、本当の僕はケントの知っている僕ではない。表向きは優良企業の社長だが、裏の仕事……こちらがメインとなるが、イタリアンマファアのアンダーボスという顔だ。 常に命の危機に晒されているが、表舞台に立つことはほぼない。やばそうな取引は全てを下層構成員に任せている。ただ、ブツを受け渡し、現金を受け取ってくるだけの仕事だ。場合によってはクレジットカードでの取引もある。 仕入れるのも別の人間が行っている。最下層の人間ではちょっと頭が足りなくて、駆け引きに劣るから役に立たない。もう少し知識のある人間が行なう。自分用の武器もそこに入れて発注をしてもらう。スーツの下にはいつも銃をホルダーに2丁忍ばせている。 ケントと再開した日、上着を脱がければならない時以外は大概身につけている。まだ、全てを話してない状態のケントに嫌われたくない、という気持ちがあった。 いつ暗殺されるか分からない身でありながら、ただ一人の男にその素性が早々にバレることを恐れるとは、ジョルダーノ・ファミリーのアンダーボスとしては腑抜けほかならない。 実際ボスが表舞台に出てこないのは、撃たれて歩ける状態ではないからだ。一命こそ取り留めたが、寝たきり状態にあるのはごく一部の人間しか知らない。幸いにして脳は無事なので、たまに顔を出して話したり、電話で連絡をとっている。裏切り者を炙り出すのに必死になってます、アピールは忘れないが、出てくるわけが無い。ボスを生かさず殺さずと命じたのは他ならぬ僕なのだから。 ボスまでの信頼を得てはいない僕が、ボスを失えば後ろ盾がなくなる。けれど、寝たきりになってくれれば、ボスの命令を盾に好きなように動ける。性悪を選んだボスが悪い。多分ボスは気付いていて何も言わない。 現在のボスもイタリア人では無い。先代もまだ存命だが、同じように寝たきりだ。この世界で生きていくにはそれくらいのシビアな気持ちが必要とされる、ということだ。 今の僕が無防備になるのはケントとベッドにいる時だけだ。お互いに裸になって、貪ることに集中している。そのを背後から1発入れられたら、その先はないだろう。だからこそ、出入口には警備を置いている。 この屋敷ではなく、ホテルで女を抱いてた時も、ドアには監視をつけていた。眠る時とセックスをする時は無防備になるからだ。 眠ってる時はある程度気配さえ感じてしまえば回避は可能だが、セックスの時はどうしても無防備になってしまう。互いを高めていくことに集中しているのだ。拳銃を枕元に置いて、などとムードのないことはしたくなかった。 「どうしてゴムをつけるの?」 「僕には子供は必要ないから……」 既成事実を作ろうとするような女は山のようにいたが、本当に子供なんていたら、女の方が絶対に後悔する。アンダーボスの妻の座は憧れるのかもしれないが、命の保証がないことを理解してない。それは僕だけでなく、家族も一緒だ。だから、僕は遊ぶだけの関係の女はいたけれど、家庭を持とうとは思わなかった。 ――ただ、1人を除いて…… 僕の本当の顔を知らない可愛いケント…… けれど、ケントもバカではない。うっすらと色んなことに気づき始めている。ボスやドンの存在を知ったら、僕の将来にも気づくだろう。 けれど、こんなことになったのはケントの罪だと突きつければ、きっと黙ってしまうだろう。 あの時、僕の命が君の手の中にあったように、今、君の命は僕の手の中にある。抱いてる時の愛らしい姿を失うのは残念だが、もしもの時は、僕が綺麗に殺してあげる。そのままアクリルの棺桶を作り、ホルマリン漬けで保存して、永遠にその美しい姿のまま遺してあげる。 僕が寝たきりになった時には枕元に置いておくには飽きないだろう。 本当に碌なことを考えない世界だ。 僕は大勢の生活と命を握っている。それを邪魔するものは排除しなければならない。上に立つ者の使命でもあるんだ……

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