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クリミナル アクト ♾ サルヴィオ 17
綺麗に張りつめたシーツの上に、ケントを横たわらせる。未だに恥じらう姿は10代の処女か?と思わせるほどウブだ。その倍は生きているであろう男が見せる姿とは到底思えない。
驚くほどに性経験が少ない綺麗な顔と躰を隠してきた男……僕と出会った頃のケントであれば間違いなくモテ続けていただろう。大学生の頃から伊達メガネをかけ、前髪をのばし、裏の仕事の時だけ髪をセットして、メガネを外してチャラいが目立たないキャラを作り出し、外界との接点を切った。
孤独の中で、ひたすら借金の返済に追われる日々。やっと返し終えたのは社会人になって数年経ってからだった。手元の資料には女性経験がある、とは書かれていなかったが、本人は若干名いると言っていた。だが、その相手の足取りは掴めていない。
ケントが誘拐した子供の年齢性別はそれぞれ違う。もしかしたら、女子高生あたりを騙して抱いて、売り飛ばしたのかもしれない。
――そうであるなら、考えてみれば、そこでも罪が増えているのだが……
それが本人の意志か、そうでないか、は別として。当時の写真を見る限り、ネオン街に立ってれば、女性の方からよってくるだろう。そういった相手を求めてクラブにも出入りしていたようだ。ケントは実に行動的だった。
特定をされないように、日本全国から港町を中心に動いていた。誘拐された子も防犯カメラには映っていないものが多い。だから、犯人の特定が難しい上に慎重かつ冷静に動いていた。
映っていたとしても、誘拐された子が防犯カメラに映って、どの方向に向かったかまではわかっているのに、その先の消息が掴めない……そんなやり方だ。そこにケントは映っていない。
前もって接点を持っておいて、待ち合わせをしたり、携帯電話でも足は着くと踏んで、連絡は公衆電話からしていたようだった。そこから指紋も出さないように、手袋をはめての通話だ。
音声記録も残してはいない。そこで足が着くようになる頃には、その手口を使っていないからだ。ここ数年は特に科学が進歩し、防犯カメラも増えたおかげで、そっちの仕事には手を出さずにいた。依頼主もメールでやり取りされていたが、暗号文を使っていた為、普通の文章にしか見えない。その文章を見て誘拐の依頼と断りだと判断するのは難しいだろう。
この綺麗な躰が他の誰に触れたのかは、もはやどうでもいいことだ。他にもこの仕事をしている人間が居る。売り飛ばした後、逮捕されようが何をしようが、その子供たちは帰りようがない。僕のように……
船の中には数名の子供がすでに居た。中には帰りたいと泣き出す子供もいれば、平然と遊び回っていた僕たちのような子供もいた。言葉すらまともに交わせない他の国の子供たちもいたが、数週間のクルーズのうちに互いの国の言葉を教えあって会話もした。その記憶があるからこそ、僕は何ヶ国語もの言葉を理解出来る。その後の言語教育でも、言葉はわかっても文字まではわからなかったが、言葉を理解出来る部分では読み書きさえ覚えれば良かったのだ。
快楽に弱いこの躰が、女を抱いた時にどんな反応をしたのだろうか……?一緒になって喘いでいた……とは考えにくいが、やはり、どうでもいいと思いながらも嫉妬する自分もいるのだと思い知る。だからこそ、先程の行為は特に赦せない。男の独占欲……特に男同士で抱くこと、抱かれることに関しては、僕はケントに対して許容は無い。
もう、ケントは僕のものだから……
どんなことがあろうと、彼が他の男の手に渡るくらいなら、いっそのこと殺してでも渡す気は無い。だから、ロレンソも見せしめとして、アイツを殺ったのだろう。
彼にも大事にしてる人がいる。逆の立場なら同じことをしただろう。その大事な人が誰なのかは知らないが、彼はひた隠しにしているくらいだから、外には出ない生活をしているのだろう。正体を掴んではいけない気がして、彼の『大切な人』の存在は全く知らない。
本当に生きているのかすら謎だ。
僕はケントの肌に手を滑らせる。ビクッと反応する姿に興奮をして彼の肢体に覆いかぶさった
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