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クリミナル アクト ♾ サルヴィオ 19

『酷くして……』 僕しか知らないケントが初めて他の男に抱かれた。色々と思うところはあるだろうが、あまり酷く抱くつもりはなかった。 ケントが僕のアキレス腱だと知られていることは重々承知していたはずなのに、送り狼を送り込んでしまったのは僕の失態だ。よくよく考えてみると、初日のリムジンの中でケントの精液を舐めていたやつだ。その時の感覚が抜けなかったのだろうか?けれど、手を出していい相手とそうでない相手の区別がつかないやつではなかっただろう、と思う。 ずっと思い出せずにいたが、アルノルド・シュレイカーの実兄の名前……生きてればケントと同じくらいの年齢……何がだったかな? ……ベルンフリート…… ボッケリーニのアンダーボスだった男の名だ。その男の手の者だったのか?まだ、ベルンフリートを崇拝してる組織の人間はいる。ベルンフリートは華奢だが、冷酷さは組織一だったことは間違いない。見た目に騙された人間は数知れず。着痩せする身体に弟のアルノルドよりも小柄な体型が故に相手に隙を与える。が、素早い動きに銃を抜くのも躊躇なく相手を撃ち抜き、その動きが早かった故、油断さえしてなければ背後から撃ち殺すことなど出来なかった程の人物だ。ベルンフリートも早くに結婚して、数人の子供がいたはずだ。多分、身を守るために、あの雪の城に住んでいるという噂は聞いているが真偽のほどはあきらかではない。 思い出せなかったほどの記憶の隅にいた人物の名前を今更思い出したのかわからないが、腕の中で乱れるケントもちょっと優しく抱いてると、何が別のことを考える余裕を与えてしまう……そんな顔をしている。人が気を遣って愛撫してると碌なことを考えていないことだけはよくわかる あんな目に合わせてしまったのだから、少しくらい考える時間を与えても良いかな?という気分にはなる。まぁ、たぶん全く関係のないことを考えているのだろうが…… すっかり『オンナ』として抱かれることに慣れてしまったと思う。もう、本物の女を充てがっても、抱くことは出来てもイクことは出来ないだろう。そういう躰にしてしまったのは他ならぬ自分自身だ。後悔はしていない。 本当に子供の頃からの願望が叶ったのだから、後悔なんてするわけがない。 『オレに飽きたらサルヴィオの手で殺して』 飽きることはない。例え躰の関係がなくなるようなことが起ころうとも、仕事上でのパートナーという選択肢はこの男の中にはないのだろうか?どんなに好きでいても、あと25年くらいは自分もなんとかなるだろうが、勃たなくなる可能性だってある。今は強制的に勃たせる薬もあるが、あと25年後となると、ケントも還暦近くなる。裏の仕事の方でその能力を発揮してもらいたい年頃だ。 それに、人生50年ではないが、次のアンダーボス候補がのし上がってくる頃だろう。 そうなれば、自分の役目は古参を黙らせるだけの存在になる。まずはこの世界で上に上り詰めるなら、自分の親がわりのボスを半殺しにして全てをベッドの上でしか生活の出来ない体にして飼うことから始まる。ボスがドンにそうしたように、僕がボスにそうしたように…… その時になったら老々介護になるのかな…… そう考えるとちょっと笑えてくるけど、今は笑うタイミングでなない。ある程度の高齢になってから、僕の介護をする為に日本から遠く離れたイタリアまで勝手に呼び出されて、躰をいいようにされて、最終的には介護をさせられるハメになるとは夢にも思わないだろう。 人の生死なんてなんとも思っていない。そういう風に育てられてきた。だからこそ、何か一つだけでも大切な宝物が欲しかった。 のし上がってきたといったって、結局は上に立つものは目の上のタンコブ以外の何者でもない。特にボスを慕って組織にいるにんげんにとっては気に食わない若造くらいにしか思ってないだろうし、僕の後釜を虎視眈々と狙っているやつ、失脚すればいいと思っているヤツ、それぞれいるだろう。 上に立てば立つほど孤独になっていく。どこかにその孤独を癒してくれる存在が欲しかったのだろう。もちろん初恋が忘れられなかったのもあるけれど、ケントはいろんな意味で僕を癒してくれる。仕事の面では僕が考えなければならないことを全てこなしてくれている。 そのことについて、すべて僕の手柄にして、自分は忍者のように目立つことはしない。鋭くリサーチして、株の売り買いは全て利益を産み出している。手を切る企業、手を結ぶ企業、そんなところまでこなしてくれているのだ。それが全て成功しているのだから、すごい実力だ。 この能力を引き出せだせなかった元々のケントの会社の連中は能無し、と呼ぶしかないだろう。公私共に支えになってくれてることに感謝はする。もう、ケントのいない生活なんてかんがえられない。 さて、そろそろ考え事から、こちらの世界へ戻って来てもらうとするか…… 頭を真っ白にするほど、本気で相手をしてあげなくては……

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