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デ・ペンデント ・ ケント 8

抜かずの三発はさすがに受身としては辛い。 しかもこいつの一発までが長い。若さなのか、元々の遅漏も重なって意識が薄れてくる。 ――それとも躰の相性があまり良くないのか…? かと思えば…… 「……最高だよ……ケントの躰以外はもう抱きたくない……すごく満たされる……」 などという。それが心が、なのか、躰が、なのかはわからない。 「……どっちが満たされるの?」 薄れる意識の中で聞いてみた。 「心も躰も……こんなに気持ちいいセックスはケント以外には感じないよ?中の具合も最高だし、好きな相手と繋がれて、相性がいいなんて最高じゃないか?」 3ラウンド終えたあとの後戯の最中にそんなことを聞きながらも、悶えてしまう。躰中を擽る手が気持ちいいと思う。本当にこの男は気持ち良くなっているのだろうか……? 「……変な心配してるみたいだけど、僕はケントが僕の腕の中で乱れてくれることが嬉しくてたまにイくのを我慢してるよ?良すぎてすぐに持っていかれそうになるよ?でも、もっと気持ち良くなってもらいたい気持ちの方が強いだけ」 オレの不安なんて見透かされていた。 その手の気持ちよさに、眠りへと誘われる…… 「……おやすみ……ケント……」 その低くて優しい声色に、深い眠りへと落ちていった。 ――その後のことは何も知らなかったが…… オレが眠りに落ちたあと、ゆっくりとベッドを抜け出したサルヴィオは携帯を手にする。 寝室からリビングに場所を替え、着信相手の名前を見てスワイプする。 「時差も考えずに電話をかけてくるなんて、あなたもしつこいですね、ミスター・カタノ。何度電話をいただきましても、須上には繋ぎませんよ?僕が話を伺いましょう。その内容次第では繋いでも良いですが、今は就寝中ですし、さっきまで愛し合っていたので僕がヘトヘトにさせてしまいましたから、すぐには起きませんけどね。あなたも抱きたくなりましたか?」 「……いいえ、私にはそちらの趣味はありませんので。どうしても彼の知恵が必要だと思いご連絡させていただいております。御無礼は承知の上です。私にも家庭があります。彼が退社したあと、彼の経歴を見て驚きました。イタリア語は学んでいなくても、海外事業部( う ち )の部署でも充分やっていけるだけのご連絡させて語学力があったこと。営業補佐として、営業部の人間の指示の的確さ……須上があなたの会社に移ってからのあなたの会社の業績が上がっていること……彼は才能を隠してましたね?」 「それが今、わかったところでなんの指示を仰ごうとしているのかな?少なくても、彼の才能を見抜けず飼い殺しにしてきた会社に疑問を持つのが先なのでは無いのですか?あなたも知っての通り、須上は目立つことを酷く嫌がります。万が一にもアドバイスをしたとしても、須上の名前は出さないことを条件にするでしょう。それに一度のアドバイスで話が収まるとは思えません。何度も何時間も彼の時間をあなた方に割く時間を僕が快く思うわけがないでしょう?」 「わかっています。恥を承知でご連絡させていただいていることも。私は須上と話をするようになったのは、ミスター・ジョルダーノについて聞かれたことから始まりました。浅い付き合いだということもわかっています。私個人が彼の考え方や、どのようにしていけばいいのかを教えてもらいたいのです。あなたの会社でも、須上が表立ってないことは存じております。けれど、彼があなたの元に行ってからの会社の業績を考えると、彼が関わってるとしか思えないのです。彼が担当していた営業も皆、業績を落とし、理由を問われた時に口を揃えて『須上の指示に従っていた』と答えたのです。あなたはその才能を踏まえた上で、彼を引き抜いたんですか?あなたが須上にこだわる理由がそれ以外、私には考えられません。」 「はぁ……ため息しか出ませんね。以前お逢いした時に理由は告げたはずです。彼は僕の初恋の人なんですよ?初恋は成就しないと言いますが、僕は成就させるための努力を怠りませんでした。15年という歳月をかけて、やっと僕の元に置くことが出来た悦びがあなたには分かりませんか?ミスター・カタノ。彼が仕事が出来る、出来ないは、僕にとってはオプションでしかないのです。」 「けれど、15年前といったら、あなたは6〜7歳くらいではありませんでしたか?」 「そうですよ?一緒にお風呂に入った時に、すでに僕は彼に欲情したんですよ。それ以来、誰と関係を持ってもその時の気持ちは味わえませんでしたが、空港で再会した時の高揚感は今でも変わりません。須上健登を呼び寄せたのは、僕が彼に会いたかったから、彼の身の回りを徐々に固めてから、こちらに呼び寄せました。そのケントにあなたの会社の株を手放せ、と言われて売却したんですよ?須上は取引は切らないものの、すでにあなた方を見限っているんじゃないですかね?そんな相手に何を求めようとしてるんです?彼は温厚でありながら、時に冷酷に仕事をこなしていっています。僕の秘書として最高の仕事をしてくれてしますよ?どうしても、というのなら、一度だけ打診してみましょう。もし、本人が嫌がれば僕が連絡をします。『YES』が出たら一度だけチャンスを差し上げましょう……それでよろしいですか?」 電話の向こうで片野が大きく息を吸い『お願いします』と告げる。 ――ちゃんと話の内容は報告を怠らず、が条件だ。 切る、をタップして、ケントの寝顔を眺めるためにベッドに戻る。無意識に抱きついてきて眠るケントが可愛くて仕方ない。抱き合いながら静かな眠りについた。

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