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デ・ペンデント ・ ケント 9

暖かい……イタリアに来てからずっとベッドを共にしてきた。人の温もりを知らないオレにとって誰かと一緒に眠る、なんてことは、ほとんどなかった。 一人っ子であり、幼い頃は両親共に仕事に忙しく、通いの家政婦が身の回りの世話をしてくれていた。唯一の休みの日曜日には両親は日頃の疲れを解消するかのように、ほぼ寝ているような状態だった。 作りおいてもらったご飯を朝昼と食べて、夜、空腹で起きてきた両親はデリバリーを頼み、母の味を知らずに育った。一緒に眠ったことなどなかった。いつも1人で家にいることばかりだった。家政婦のいる時間は外出は出来ないが、午後6時〜7時の間にはたいがいの仕事を終えて帰宅してしまう。両親が帰ってくるのは、早くても夜10時を回る。僅かな時間、子供には多い小遣いを使い遊ぶことを覚えた。 その小遣いも徐々に減っていき、家政婦も解雇された。それぞれの会社が傾いてきていることを知ったのが高校生になってからだった。親の見栄や英語が得意だったこともあり、インターナショナルスクールに放り込まれた。 高3になる頃だった。 親が借金を踏み倒して逃げた。家は全て差し押さえられ、自分の衣服や身の回りのもの以外のものを残し、親が捨てていったものの全てを売り払っても膨大な借金は残った。家にある売れるものは全て売った。家も競売にかけて売り払った金額でなんとか、母の会社の借金は返済ができたものの、父の会社の負債額には全然足りない金額をボロアパートを借りるための金を残して返済したものの、足りる金額ではなかった。転校してでも高校は卒業するべきだと判断したが、その転入先を決めようにも金がかかる。働きながらの夜学も考えたが、オレの見目を舐めるように見た男が悪魔の囁きをした。 『借金返済のために、いい仕事を紹介してやる。お前の容姿なら簡単だ。しかも短時間でこなせて見返りもいい。返済も学費もそこから出せばいい。せっかくいい学校に通ってるんだ、その学力を将来的に活かせ。どうだ?小僧、選択肢は少ないぞ?低額になるが、風俗で躰を売るか、お前の内臓を売るか、俺らの仕事の手伝いをするか、の3択だ。』 『どれが一番割のいい仕事になる?』 『俺らの手伝いだな。』 『……なら、それにする。生活の保証はあるんだろ?短時間で稼げるなんて、まともな仕事だとは思ってはいない。でも、オレも生きていかなきゃならないからな……』 その時はそう思っていた。内臓を売って、そのまま命ごとくれてやった方が良かったと思うのは、かなり先になってからのことだ。 数回、その仕事をしている人物を紹介され、ついて行く。そいつらのしていたことは、隙のある子供を『誘拐』をして、横流ししていたことだった。そこまで大きな犯罪を背負うことになるとは思いもしなかった。 運が良いのか悪いのか、付き人でついていっているのに、親からもらった容姿のおかげで女児にはよくモテた。だから免許を取らされ、独り立ちをさせられた時も最初のターゲットは女児の予定だった。 たまたまだった。見かけた男児は寂しそうな表情をして、トボトボとトイレに向かうところを見たのは。だからちょっとした後ろめたさもあったんだと思う。オレは彼に声をかけた。寂しそうな表情が一転して、楽しげで嬉しそうな表情に変わった時、彼の方から誘われた。ターゲットを男児に変更して、いくつかの以来の中の一つのデカイヤマに変更することにした。 彼はすんなりとオレの言うことを聞き、無防備にも着いてきた。その時に一緒のベッドに入った。子供の体温が高いことを初めて知った。可愛らしい寝顔を見ていると少し胸が痛んだ。 数時間後には離れなければならない。 自分も知らない場所に行く彼が、その場所に順応してくれればいい。強く生きて行ける人間であって欲しい…… ――ケントは一緒に行かないの? 高くか細い声が、ずっと忘れられなかった。 罪悪感を強く感じたのは最初のその時だけだった。その後は彼のような純粋すぎる子供と会うことも無く、情がわかないように密に接することも避けてきた。セックスをした女の子もいたが、ホテルの出口から、ヤツらの車でどこかに連れていかれた。1人はホテル街に着いた途端に連れていかれた。家出少女の逆ナンの女の子ばかりだ。誘導されるがままにオレは奴らの指示に従ってきた。 この歳になって、誰かと褥を一緒にし、その温もりに安心する日が来るとは思ってもいなかった。ベッドを共にし、その温かさを教えてくれた少年に、今度は大人になって、自分がその温もりに甘えているのだ。完全に依存していることはわかっている。 けれど、自分を必要としてくれて、みっともないほど乱れ喘がされても、それが嬉しいことだという言葉に一喜一憂してる自分の方が子供のようだと感じることもある。そばにいたくて自分をフル稼働させている自分がある意味滑稽だが、手離したくない……と思っている。サルヴィオもそうであればいいのに……ずっとそうであってほしいと願わずにはいられなかった。

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