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向こう側の世界-9
「私は、皇室付きの魔道士のビィと申します。以後宜しくお願い致します」
頭を垂れて跪いた。だが、優斗がそのランフィスのマントで包まっているのを見ると、驚いたようだった。
「すぐ、皇宮へ戻りましょう」
「わかっている」
ランフィスはそっと優斗を抱えようとした。
「待って、俺は行くなんて言ってない。あの変なギオとかいう男にやられそうになったのを助けてもらったのは感謝するけど。でも、だけど、だからと言って信じてるわけじゃない。パートナーとか言われて連れて行くとか急に言われても分からないし!」
優斗は抱えられたその腕を振り払う。
「ユウト・・・」
ランフィスは苦しそうに言った。
「・・・ユウト、あなたはこの国に元々いたわけじゃないから、理解出来ないと思う。でも、私たちは、敵ではない。だから安心して欲しい。もうすぐ闇になると・・ここにいられない。闇になると・・・周りは闇の皇子が自由に動ける世界になる」
「闇の皇子の"世界"?」
「皇宮へ付いたらきちんと説明する。今は時間が惜しい。私たちを信じて欲しい……ユウト」
再び優斗の手の甲に口付ける。そして、また、あの痺れるような熱い感覚が来た……。
ぼんやりと優斗はランフィスを見上げる。ランフィスも優斗をじっと見つめる。優斗はその紫の瞳に吸い込まれそうだと思った。
ランフィス手のひらがそっと優斗の頬を触ってそのまま包み込む。
(さっきと同じだ。何でだろう?このまま触れていて欲しいような・・・)
優斗はその不思議な感覚に戸惑っていた。ランフィスの顔が静かに近づいて、そのまま、優斗の唇に触れる。
(……あ・・・キスとかキスとかキスとか・・・・・)
だけれども、それはちっとも嫌ではなかった。
寧ろとても心地よい……。
「・・・。やはり、あなたは、私のパートナーだ」
皇子はしっかりと、優斗を抱き締めた。
「・・・・あ・・」
先ほどよりも、もっと、もっと熱いなにかが優斗の中に来た。
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