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向こう側の世界-10
傍らで行き成りゴホンっという咳払いが聞こえた。
「皇子、早く皇宮へ、ここでゆっくりと抱擁しあっている場合ではありません。もうすぐ闇になります」
「わかっている。ビィ。」
ランフィスは優斗をあっという間に抱きかかえると天馬に乗りそのままランフィスの前に乗せた。
優斗はそっとランフィスを仰ぎ見た。紫の瞳が優しそうに優斗を見て微笑んでいた。
ランフィスを見ていると何故か安心する。優斗はそれが何故だかよくわからなかったけれど……。
(でも、よくわからないけれど、ランフィスは信じていい気がしてきた……)
天馬はあっという間に空を飛んだ。
日は傾き夜の闇が迫ってきているのは確かなようだった。キラキラと輝く空と闇が混合した・・・。そう、これは、まさに逢魔が時。
優斗が下を見ると深い森が広がっていた。
(ビルなんて見えないし無い)
たしか、学校の近所には高層マンションがすぐ見えたはず。やはりここは、優斗のいた世界では無いという事が改めてわかった。
(これと同じようなのって、富士の樹海とか?・・・ここは本当に何処?)
ふと、その遠くにはより深い闇が広がっているのが見えた。
"あれは・・・・"
ランフィスが静かに言った。
「皇の力が弱まると無の世界が広がる。既に、わが皇は力が弱まっている。これ以上力が弱まれば、光ある陽の時もそれは闇となり。闇の国のものに取って代わる。だから早く私が皇の後を継いでその闇を変えなければならない。そのためにユウトを探していた……」
その日のキラキラした光が眩しくて優斗はそのまま目を閉じた。
(わからないよ。わからない・・・。これはきっと夢なんだ・・夢。だから早く目が覚めて・・・)
そして、天馬に乗っているその揺れが心地よいのか、だんだん眠くなって意識が遠くなって行った。
………
……
…
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