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レン-2
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レンの所にいたランフィスにビィの心話 が聴こえてきたのはそれから半刻ほど経った時間だった。
心話は心の中での会話、ダイレクトに頭の中にメッセージを送り届ける事を言う。これが出来るのはある程度の能力をもった魔導士かそれと同等の能力 を持つものだけだった。だけれども、ビィが心話をランフィスへ向かって使うのは本当に稀で殆どない。何故なら皇子であるランフィスへ直にメッセージを送る事のできるその術は、特殊な場合を除き不敬にあたるからだ。
今回はその特殊な場合だった。
ランフィスがビィの心話を受け取り、急いでビィの元へ行くと、そこには優斗が気を失っていて、宮 のすぐ外には禍々しい何かの気配がしていた。
「一体どうしたんだ?」
そこでビィが起こったことを説明した。
「影自体はあまり力の強いモノではありませんでしたので、すぐに祓えましたが」
ビィはその後、優斗がここから去ろうとして止めたとも言った。
「ユウト様は不安なのです。この世界にただ一人で来たのですから。今後は……ランフィス様がずっと傍にいて差し上げてください」
それから、ビィは少し間を置いて再び言葉を発する。
「ユウト様はランフィス様のパートナーです。レン様もその事は分かっているはずです」
そして、ビィは何人かの宮にいる魔道士へ皇宮の周りに更に強力な結界を張るように指示をした後、ランフィスに優斗を託すとすぐさま自分も向かって行った。
(それは暗にレンの所へは行くなという事か…)
ランフィスはビィが言いたい事はそういう事だと感じた。
レンがこの件を知ればもう夜には会いたいとは言うのを辞めるだろう。
ビィも言っていた通りにレンは分かっている。
だけど、自分もそれは分かっている。
それは、幼い頃から常に一緒にいた友人以上になっている彼を失うことではない。
ランフィスはそう思った。
神の定めたパートナーが在るという事は次期皇の立場になると言う事。
"だから……"
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