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現皇-5
皇との謁見が終わって優斗は、ぼんやりとした足取りで、ランフィスの後に続いて部屋を出た。
(凄く疲れた)
俺は一体どうなってしまうんだろう?
このままこの世界にいなければいけないのだろうか。
もとの世界には戻れないのだろうか?
ここが、俺のいた世界じゃないって事は理解した。
というかもうそれを信じるしかない。昨日から・・・の出来事は俺の知っている"世界"では絶対にありえない。
これが夢ではなかったなら・・。
これは夢ではないというなら・・・
ここは、やはり自分とは違う世界なんだ。
そんないろんな事が優斗の頭の中をぐるぐる巡っていた。
(もう、わからないよ)
歩みが遅い優斗を心配してランフィスが顔を覗き込んで来た。
「ユウト?」
"俺はこのままここにいるしかないの?"
優斗は自分にしか聞こえないような囁くような声でで言う。
「どうした?ユウト?」
「俺は、ここにいるしかないの?って言ったんだ……たしかにランフィスといると心も休まるし引き合う。神が決めた運命と言うのもわかる。だけど、俺はここの習慣や信仰も知らないし、行きなり連れてこられただけで……。そこに僕の意思は無い。これじゃ……これではただの拉致じゃないか」
優斗は一気にランフィスに捲くし立てた。侍女や従僕達のいる前で言ってしまったのに気が付いたけれども、言ってしまった言葉は戻せない。
回りの空気が変わる。どよめきとざわめきが起こり、優斗に向けた好意の目が一気に非難に変わった。
"やっぱり異界の人だ。外見はあんなに優しげなのに、やはり思いやりのない"
"あんな暴言をランフィス様に言うなんて信じられない"
口々に囁かれる。
(思いやりのないのはどっちなんだ?俺はいきなりここに連れてこられたんだよ?)
「俺を非難するなら俺を受け入れないなら、今すぐ帰してよ、俺の世界に」
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