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現皇-6

「……ユウト」 ランフィスは優斗の手を静かに取って最初会った時のように跪きその手の甲へ静かに口付けた。 「ランフィス……触れないで」 (触れられると……もう何もいえなくなってしまうから) (しるし)は引き合う、理由(わけ)なく呼応する。 「すまない本当に。この地を守るのには、ユウトの事が必要なんだ……ユウトの意思を無視するつもりはない。本当はもっとゆっくり、もっと時間をかけて、こちらの世界に連れて来たかった。そうしたかった。だけど……。皇の身体も思わしくない今、時間はあまり無い。昨夜、ユウトと同期したのは早く知ってもらいたかったんだよ」 「少しだけ……ここの状況は見えたけど」 優斗が昨夜ランフィスと同期した時、少しだけ観えたここの世界のしくみ。ここの世界と皇の事。 (だけど、自分の気持ちがついていかない) 「私は、ユウトを絶対に蔑ろにしない」 「ランフィス……」 (触れられると…引き合う、呼応する。だから、自分の心がわからなくなる……) 優斗の心の中が乱れて行く。 (だけど、それは、きっと印が互いに惹きあっているからなんだ) 「ビィから、必要以上に引き合わないようにこれを貰った」 ランフィスは、優斗の目の前に自分の左手を見せる。 「これは、印の呼応を抑えられる術が掛っている。印の引き合いは、皇子である私のほうがより一層強い。今朝まで抱きしめていた時、これを付けていた。必要以上にユウトを欲する要求は抑えられていたんだよ」 ランフィスの左手首には、漆黒の色の黒耀石のような宝玉で作られた数珠状のブレスレットが付けられていた。 ランフィスは手首にあったブレスレットのひとつを外して優斗に差し出した。 「ひとつはユウトのものだから」 優斗はそれを受け取ると、すぐに身に付けてみた。呼応は止まったのだろうか?優斗がそれを確認するより先に、ランフィスは優斗の頬にそっと触れた。その手と頬が互いに"熱く"感じて、互いに目を見つめ合った。 優斗には呼応によるものなのか、そうではないのか、もうどちらでもいいような気がした。 ……… …

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