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この世界の理-3

それは、とても長い話で、だけど、優斗にとってはとても興味深い話だった。 こちら側の世界の揺るぎない常識は、 この世界を治めるのは陽の国の皇であるという事。何故なら、神から頂いた皇の(しるし)を持つ者はこの陽の国にしか生まれない。 それは太古の時代から不変であり揺るぎない。それが当たり前で皆、そういう認識で生きている。 神から頂いた(しるし)を持つ皇はその『気の力』によって地に活力を与えるという役目を負っている。地は春も夏も秋も冬も無く、気の潤いによって地が変化する。 「四季が無い?」 優斗が思わず聞き返すと、ビィは答える。 「はい。ユウト様と同じく私も日本にいました。おそらくユウト様の時代よりも数百年ほど昔でしょうか?日本の四季の変化はとても美しかったですね。ここにはそういう観念がないのですよ」 皇の『気の力』が強ければ、花は咲き誇り緑は青々として、作物はよく育ち生い茂る。 しかし、その力が弱まれば、草木は育たなくなり空も地も闇に支配され、闇の世界が広がり、闇の皇が支配する事となる。 闇の皇の支配は本来なら夜の闇のみの支配。だが、陽の国の皇の力が弱まり、地が闇に支配されれば、すべての地が闇の世界のものになってしまう。 優斗は疑問を口に出した。 「それでは、皇は『神』という事?」 「『神』ではありません。皇は自分の意思で皇にはなれません。それを選ぶのが、神でありその神が皇へ"(しるし)"を与えるのです。印を与えられた皇は絶対であり、そして世の運命を決めるもの。それは、そちらの世界で言うところの権力での支配とはまた違います」 .

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