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継ぐ者-1
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優斗の部屋のバルコニーから見える木々は葉がもう殆どなく僅かな葉が枝についているのみだった。それを優斗は、ただただぼんやりと見ていた。
ビィの話はあれから暫く続いていたけれども、優斗は聞けば聞くほどに自分のいるこの世界がリアルで、自分がここにいるしかないと認めざるを得なかった。だけどそれを受け入れる事ができるのかは、わからない。自分でもどうしていいのか分からなかった。
1人になりたくて誰も寄せ付けずに部屋に籠っていた。
ここはこちらへ来てからずっと優斗に与えられた部屋で、元の世界で住んでいたマンションの部屋よりもかなり広い。
皇宮の中でもこの場所は皆がいる中央よりも少し離れていて静かな場所にある。静かだから、1人で優斗が籠っているのにはとてもよかった。
侍女に食事を摂って下さいと何度となく優斗は声を掛けられた。でも、から返事をするばかりで、かなり長い時間バルコニーに佇んでいて外の景色をみていた。
「寒いので部屋にお入り下さい」
侍女が心配そうに言った。
「いいよ」
侍女は困ったようにどうしたものかと、考えをめぐらした。
このままでは、優斗の身体が冷え切ってしまう。優斗が体調を崩してしまってはいけない。そうなってしまったらそれは自分の責任だと思っているようだった。
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