45 / 379
継ぐ者-3
「ランフィス?」
吃驚して優斗が振り向くとそこにランフィスがいた。
「ごめん、驚かせたね」
ランフィスは続けて言った。
「ユウトは、元の世界に帰りたいんだね?」
「帰りたい。でもそれは無理ってことは理解した。でも、だけど、それを受け入れろとか言われても、どうしていいかわからない……」
ランフィスのほうを見もせずに優斗は小さく独り言のように言った。
「ランフィスが俺を欲しいと思うのは、力が欲しいだけ?印 が付いていれば俺じゃなくていいの?俺の存在ってそれだけ?」
ランフィスは黙っていた。
(ビィに貰ったブレスレットのおかげか、高揚感と引き合いは無い。ランフィスといるのは、とても落ち着くし……不安ではなくなる気持ちになる…)
その感覚をどうとらえていいのか優斗は分からなかった。
「こんなに、手が冷たくなっているよ。ここは寒くなる。早く部屋に入ろう」
そっと触れられた手はとても暖かくて心地良い。優斗はランフィスに触れられる度、何度となくそう感じる。
(ランフィスの掌はとても安心する。ランフィスもブレスレットをつけているし、だから印の引き合いで起こっているわけでは無いはず。だからこれは……?)
「ユウトは、この世界に自分を分かってもらえる者はいないと『自分の味方はいない』と思っているのかもしれない。だけど、それは違うんだよ」
優斗はきっと、ランフィスは自分が"ユウトの味方だ"と言いたいんだろうと思った。だけど、ランフィスが言いだした事は違っていた。
「私も同じだったんだ」
ランフィスはそう言った。
「私も、ここには味方はいなかった」
繰り返すようにまた言う。
「何で?だってランフィスはここの皇子で、それなのに、何故?」
少し驚いたように優斗は目を大きく見開いた。
「そう、皇子だ。でも、ここに来たのは、今までの皇子よりも遅いんだ」
そう言う皇子は少し寂しげな表情をしていた。
.
ともだちにシェアしよう!