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継ぐ者-5

「そう……。今の皇のバスティンが虚弱体質なのに皇に成り得たのは……。本来皇になるべくだったはずの継ぐ者が何者かに殺められたからなんだ」 優斗にとってそんな暗殺とか向こう側の世界では自分とは無縁な事で、 (何処かの国の偉い人とか、あとは、大昔の戦国時代にしてた感じ) 自分とは全く関係のない話だった。 (だけど、こんなに身近に起こるって……) 本当に、全く違う所に来たんだと、改めて思った。 ランフィスがさらに続けて今の皇が継ぐ者となったそのあらましを話した。 (しるし)を持つ者は神の加護がある為か命に係わる病や事故には殆ど遭わないハズなのだったが、それが、"何者かの手によって"殺められてしまった。その"何者か"は結局分からず仕舞いで、おそらく、闇の皇の手の者ではないのかという事で終息したと言う。 「そういった不測の事態には必ず二番目の継ぐ者が現れる。それが今の皇のバスティンになるんだよ」 バスティンは虚弱体質ではあるが、(しるし)を持つ者のその加護がある為か命に関わる病にはならないが、常に病の床に就いている。細く長くといった感じだった。 彼のパートナー探しは難航するかと思われたが、だが案外それはあっさりと見つけられた。何故なら、パートナー本人が今の皇へと会いに皇宫に出向いて来たからで。本来なら皇、自ら、パートナーを探し出さなければならないのに。それも印の引き合いによるものと思われた。 「でも、パートナーを得て皇となったバスティンは、次世代の継ぐ者を探し出すのには時間が掛かってしまったんだ…。それが私、ランフィスなんだよ。そうやって今の皇とその継ぐ者の私は今までとは違う稀有な形で皇と継ぐ者に成った」 だから、と 「だから、ずっと、ここでの生活には慣れなかったし、ここから出たかった……」 そこで、少し間を開けてから再びランフィスは言葉を続ける。 「だけど、乳母の子のレンと仲良くなってから。そんなこともなくなった。彼が自分を元気付けてくれた、それから彼が近侍になってもそれは変わらない」 レン…?と聞いて優斗は一瞬誰の事か分からなかった。 (今朝会ったあの騎士っぽい人の事?…まあ、ここにいると男の人は従者とかの他はみんな騎士に見えるし) ぼんやりと思い出すのは綺麗な緑色の瞳が印象的だったということのみだった。 .

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