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湯の中-3※

「……これ以上キスしていると、また抱きたくなってしまう」 ランフィスにしても、これが(しるし)の引き合いなのか、そうではないのかわからなかった。 ただ、自分の欲望のままには優斗に接したくはないし、優斗を傷つけたくないと思った。 その時、囁くように小さく優斗が言う。 「……もっとキスして…」 「……それは…」 そう言うと同時に、ランフィスは優斗を引き寄せ抱きしめる。湯が大きく波打ってチャポっという音がする。 肌と肌が直接触れあう。 優斗は自分の心臓が撥ねるのが分かった。 「なんて優斗は私と比べると華奢で細いんだろう」 「そんなの…。俺だってそんなに細くはないんだよ。向こうではこれが普通」 優斗をギュっと強く抱きしめると壊れてしまいそうだとランフィスは思った。 だからそっと優しく抱きしめた。 「私はユウトの事が好きだよ。だから、こうやっているのは嬉しい」 「(しるし)の引き合いで、パートナーだからじゃなくて?俺自身として?」 「そうだよ」 それは、優斗もランフィスも同時に思っていた事。 だけど、優斗は "……好き……" と言うのをためらってしまう。言葉に出せばその言葉が力をもってしまう。 (そんな感覚は日本人的なんだろうけど) それが本物の感覚なのか、それとも印の所為なのか・・・ (どうしよう。このままだと、また、流されてしまう。ランフィスともっともっと触れ合いたいって思ってる) 優斗にはよく分からない。そっとランフィスの手に触れた。 「ランフィスの手は暖かくて気持ちいい」 「私も同じだよ。優斗の手も身体もすべてこうやっていると心地いいんだよ」 ランフィスの声が響く。 "なら……もう、いいや、色々考えないことにする" ランフィスの耳元へ囁く。 「好き……」 優斗が言い終わらないうちに、ランフィスはその唇に深くキスをする。 言葉には力がある。優斗はそう思っていた。だからなのかもしれないけれども、言ったと同時に優斗の顔と身体とそのすべての肌が、熱くなっていく。 それは優斗も、そして、ランフィスも。 その下肢の中心がぐんと質量を増していくのを感じた。 だから……熱を帯びたままに優斗は小さく囁く。 「……抱いて?」

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