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広がる黒い染み-2

"ランフィス様のパートナーのお披露目が楽しみだねえ。何時になるだろう。なんかここの国の人じゃないってさ" "異界の人だってよ。どんな人だろうねえ" "綺麗だってきいたよ" 人々が口にするのは、ランフィスのパートナーとなった優斗への噂だった。 それは、ここの世界の人ではないということ、異世界の人だというのに、綺麗な人だということ、そんな噂でもちきりだった。 この酒場でも同じように噂話をしている人達がいて、静かに座っているレンの所にも聞こえてきた。 街の賑わい、そして、城へは連日、祝いの品が届く。国の領主だけではなく他国からも届き、城の中もにぎわって、皆浮かれているというかそわそわしていた。 ランフィスが無事、パートナーを得た事は陽の国にとっては、とても良い事なのに。レンはどうしても、自分だけが気が晴れなくてどうしたらいいか分からなかった。 ランフィスの近侍であるレンにとって、国の安定はいい事で。それは分かっている。 だけど、思ってはいけないことが、常にレンの心に浮かぶ。 "自分はランフィスのパートナーではない" 「近しい者」には(しるし)は現れない。 それは昔からそうなっている事はレンは知っていた。だから当然、自分には印は現れないと分かっていた。 ……だけど、万が一という希望もあった。 しかし、その(しるし)をもっている正式なパートナーが現れてしまった。 どうやら、異世界にいる人らしいと。レンはひそかにがさつな奴だろうと思っていた。だけど、現れたのは自分よりもはるかに華奢でかわいらしい人だった。 .

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