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広がる黒い染み-4

ランフィスの近侍であること、陽の国に使えている自分にとってはこれはこの考えは。最早、謀反にちかいことだとも分かっているが。だけどレンの心に浮かぶのは……。 "何故、自分ではなかった?" "何故、自分には印が無い?" "何故、自分がパートナーにはなれない?" 黒く黒く暗い心の中に毒が染みこみどんどんひろがっていくようだった。 だから、レンはそんな心を誤魔化すために、夜の街にでて酒場で酒を煽ってしまう。 酒場の喧騒の中でも、やはり、ランフィスのパートナーの優斗の噂話が出てくる。 (ユウトの話はもう聞きたくない) レンは小さくつぶやいて酒を煽る。 「……皇子の側近のレンさまでしょうか?」 気が付くとレンの隣に誰かが座っていた。 声は男にしては少し高くだけど女にしては低い。男か女か全くわからない。服装もどちらともとれるような風体だった。 「……何……?」 ここにはレンは身分を隠して変装もして自分と分からなくして来ているハズだった。 「大丈夫、分かっているのは私だけですよ」 「お前は一体何者なんだ?」 そいつはそれには答えず、変わりに言い出した事にレンは耳を疑った。 「皇子のパートナーを変えたいのでしたら、方法はありますよ?」 「…何……?」 「もし、興味があるなら、明日、同じこの時間のこの席にまた来てくだされば詳しくお話し致しますよ」 そう言ってそいつはあっと言う間に席を立って店から出て行ってしまった。 (パートナーを変える?どういう事なんだ?そんな事。聞いたことない。それに、あいつは誰なんだ?俺を知っていた?) レンはさきほどいた者の姿を思い出そうとしても、全く思い出せなくなっている事に気がついた。 .

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