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広がる黒い染み-5
次の日になっても、昨夜、出会った者は一体何だったのだろうとレンは気になっていた。
("皇子のパートナーを変える"ってどういうことなんだろう?)
今まで何度となくあの酒場には行っていたが、だけど、誰一人としてレンと分かる者はいなかったし出会う事もなかった。
酒場では時折、同じく皇宮に出入りしている者も見かけたが、レンに気付く者はいなかった。
(あの者は本当に存在していたのだろうか?アレはもしかしたなら自分の夢だったのでは?)
顔を思い出そうにも思い出せないし、レンは何となくそんな気がしてきて、アレは、酔っぱらった時の夢だったのかもしれないと納得していた。
自分の思っている願望の夢だったのではないかと…そう思った。
ランフィスと優斗の2人の関係がより良好である証拠はこの陽の国の気候が安定しているのにも現れている。
最初、光の束の放出があった日から毎晩、光の放出が続いた。だけど、ここ最近は夜ではなく、気の力をランフィス自身の中に溜めて昼に気の光を放出しているようだった。2人が生み出す"気の光"はとても強く、気の光を生み出す度に世に放出すれば気候はよくなるが、それが過熱過ぎるとそれは逆に良くない。
皇子はビィに聞いて気の力を己に溜めるという事を出来るようにしたという。
今の皇ではそんな心配もなかった。ランフィスと優斗の2人で生み出す気の力は現皇よりも大きいという事でそれはより相性がいいと言う事。
最近はランフィスは殆ど優斗と過ごしている。そして、レンが見かける優斗はますます綺麗になっていた。
そんな様子を見るにつけレンは本当にもやもやとしていた。
(……そう……俺は嫉妬している)
この気持ちを持っていた為に、夢を見てしまったのではとレンは思った。
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