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広がる黒い染み-6
あのおかしなやつにまた会うかもしれないと思いながらレンはその夜も酒場に行った。
いつもの席に座って、酒を飲みながらぼんやりしていた。
(やはり、昨日のアレは気の迷い、夢だったのかもな)
そうこうしていると、レンの後ろの席で座っていた酒場の常連の2、3人が、興に乗って来たのか歌い始めた、他の客がそれに合わせてリュートを弾いて、他の皆も喜んで囃し立てている。レンもそれを面白がりながらそれを見ていた。
「やはり、いらして下さいましたね。レンさま」
突然、隣に座った者に話し掛けられた。レンが振り向いて見ると、昨夜のあのおかしなヤツだった。いつそこに座ったのか気が付かなかった。レンは今度こそ、そいつの顔を忘れないように良く見ようとじっと顔を見る。男のようでもあり女のようでもある。
「どうしました?」
「……いや……」
そいつはレンを見透かすかのように少し笑う。
「ここに来たという事は、昨日の話に興味を持って頂いたのでしょうか?」
そう言われてレンはどう答えていいか躊躇する。
「昨夜の話は、自分が酔った上で聞いた事だった。実際、本当に聞いたのか自分としてもあやふやだった」
すると、そいつはまっすぐにレンを見据えて言った。
「では、どうしますか?話しを聞きますか?」
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