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闇のいざない-4
ジマはもうそれ以上は答えない。ただ微笑んでレンを見つめるのみだった。それ以上を聞くにはレンが"望む"と答えるしかないのだろう。
優斗が自分であったのならとレンは望んでいたことには間違いはない。しかしここで、それを望むと返事をしてしまっても良いのだろうかと、レンは躊躇している。
だけど、ジマに見つめられていくうちに、そんな躊躇は消し飛んでいくような、"ソレを望むのがまるで当たり前"というそんな感覚になっていった。だから、レンは答えてしまった。
「……俺は…皇子のパートナーを自分に変えたいと思う…」
答えを聞いて、ジマは満足そうに思い切りにっこりとして
「……わかりました。あなたのお気持ち確認しました」
そう言った。そこから先は何が起こったのかレンには分からなかった。
「これから、本当に大切なお話を致しますので、邪魔の入らない場所へ移動いたします」
その瞬間、すべての音が消えた。そして周りも消える。
「何?」
「元々の空間と違う所へ行きます」
「魔道の力?」
「……私は魔道士ではないんですよ。最初ご説明したとおり魔道を少しだけ嗜んだだけの者です。元々異能の力があっただけの」
暗く何も見えないその空間にただただ、ジマとレンだけの場所が明るくなっている。
レンはその普通ではないこの場所に動揺したが、だけど、ここには地面があり、きちんと地に足が着いているということは、何処かの場所であるということは間違いはないと思いその不安な心を抑えた。
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