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闇のいざない-6

ここで、レンは迷う。だけど、ジマと出会ってしまって、(しるし)の話を聞いてしまったその時点でもう自分は引き返せないと思っていた。 「わかった。主が誰だろうとは問わない。ジマから話を聞くだけだ。それに、これ以上のリスクは負わないのが良いと思うしな」 「……さすがはレンさまです。賢明なご判断です」 さて、とジマは一息つき、また続けて話しはじめた。 「レンさまには、皇子のパートナーであるユウトさまを連れ出してほしいのです」 「連れ出す?」 優斗は外へ出るのは特に禁止されているわけではない。特に優斗は城の外の街にはあまり興味を持ってはいない。それは、外へ出るといっても案内なしで1人で出歩けないといったこともあった。 皇城の庭もかなり広いしその中でいるだけでも今は優斗は収まっているといってよかった。 「どうやって言って外へ連れ出すんだ?無理に外へ出すというのは難しい」 「たしかに、難しいかもしれませんが、これはレンさまにしかできません。私が城へ入り込み何かするという事は、皇城は外部からの侵入には厳しく、魔道の力をもってしてもビィさまの結界があるかぎり出来ません。でも、中から外へ出る分には緩やかです」 「では?どうやって?」 「ユウトさまに知り合いの魔道士に向こうの世界の事を知っている者がいるとおっしゃってみて下さい」 「向こう側の異世界を知っている?」 「はい、私はおそらくビィさまよりかは、"今"の向こう側を知っています」 「それは……」 レンはそれを聞いて驚く。 "ビィが向こう側の世界を知っている"という事を"知っている"のは皇族とレンのようなその側近以外では知るはずがなかったからだ。 .

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