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麗らかな時の-5

ジマは深々とお辞儀をして優斗に話し掛ける。 「ユウトさまでいらっしゃいますか?」 「あなたは?」 「私はジマと申します。ユウトさま、お会い出来て嬉しく思います。私が向こうの世界を知っている魔導士です。いや、本当は魔道士ではありません。能力者という言葉でいうとあなたにはわかるかもしれません」 「能力者って……超能力??」 「はは、そんな名前で言われていたこともありました。でも、ここでは能力者と言ったほうがしっくりくるでしょうね」 そして、レンのところへ向き直って、ジマはまた深くお辞儀をする。 「ありがとうございます。これで、(あるじ)の希望を叶えられます」 それから……。 ジマは静かにレンを見つめた。 "あなたは、今日は何もしていない、出入りしている奉公人をただ城の外へ送っただけです" 口を開いているわけでもないジマの声がレンの頭の中に響いてきた。それが、頭の中へ入った途端に、レンの目の前が白くなっていき痺れるような感覚に陥って行った。 優斗はジマがレンに話し掛けてから、レンが行き成りぼんやりと立ち止まってしまっているのを不思議に思って聞いた。 「ジマさん?レンは一体どうしたのですか?」 ジマは、にっこり微笑んで答えた。 「大丈夫ですよ。レンさまに暗示をかけただけですから」 「あんじ……?」 ジマは何を言っているのだろう?優斗がもう一度聞こうとすると、それを遮るようにジマは言った。 「ユウトさまは気にしなくても良い事です」 「……どういうこと?」 その瞬間に黒い霧が湧き上がり、あっという間に優斗の周りが黒く塗りつぶされていく。 「ではユウトさま参りましょうか?」 ジマは優斗を連れてその黒い霧とともに消え去った。 .

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