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憂慮-1
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良く晴れた空に一瞬激しい風が吹く。
庭が良く見える渡り廊下を歩いていたランフィスは、突風のような冷たい風に少し驚いた。最近は安定しているのでこういった天候の変化を知らせるような事もなかったからだ。
(最近、気の放出を抑えていたからなのか?)
ランフィスはそう思った。
このところ、とても忙しく日中はほぼ色々な公務という雑事に追われていたせいなのかもしれない。実質この大陸の政を司っているのが陽の国である。印を持って生まれてくるのが陽の国の皇だけであり、それは、この大陸の事象を司る事が出来るからに他ならない。
だから、そのトップが変わるというのはなかなかに大変なことだ。
その忙しさで優斗と会うのは夜のみという事が多く、ランフィスは寂しくさせてはいないかと心配になっていた。
ビィも気に掛けているようで、こちらの世界の事を時折教えていたりしているようだった。
ランフィスは優斗が祝いに送られてきていた花が珍しいらしく興味を持っていたので、皇宮の庭園を見て回ってみると良いと勧めてみた。少し時間が空いた時に優斗と一緒に庭園へ行くと楽しげにしている様子でランフィスは少し安心した。
それから、優斗は幾度となく庭園へ行っているようだった。この皇宮の庭園はいくつもあって、丁寧に観て回っても飽きないだろう。
(子供の頃はレンとよく庭園で遊んだものだったな)
ランフィスはぼんやりと思った。
(……レンとはあれ以来会っていない。いや、公務では会っている。でも、プライベートでは全く会ってはいない、時々レンからもの言いたげな視線を感じるけれど、どうする事も出来ない)
それは、レン自身も分かっている筈であると思っている。そうでなくてはこの陽の国の皇子の側近は成り得ない。
これで、よかったのだと、ランフィスは自分で言い聞かせるように思う。
「…だけど……」
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