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閉じる空間-2
"…ユウトさま……"
優斗の耳に声が聞こえた。
「ビィ……?」
それはビィであった。ビィがここにこの空間に突然やってきたのだった。
ビィは、優斗に向かって手を差しだしていた。優斗は驚いたがすぐさま自分も手を差し出す。すると、何かビィの掌から優斗へ向かって投げられた。
それは優斗には何かの玉のような形のものに感じた。"気の力の塊のようなもの"だと。しかし、それを受け取る寸前に阻止をされてしまった。
「………ここはまだ、私の空間です。ですから、私の力のほうがまだ上ですよ?」
阻止したのはジマだった。
「やはりあなたでしたか…闇の皇子の魔道士ジマ」
ビィはさえぎってきたジマを見ても別段驚く様子はなかった。それは、誰がこの空間を作ったかを予見していたかのようだった。
「さすがはビィさまです。分かっておりましたか?ですが私は魔道士ではないですがね」
「異能力者ですか?闇の力ではない。そう。それは、魔道の力でもない」
「よくご存知で……」
暫く、ビィもジマもそのまま睨み合う様に向かい合う。
「魔道の力ならば異変はすぐに分かったでしょう。ですが、この力は……」
あまり感情を表に出さないビィだったが少し目を見開き、誰が見ても怒っているという表情になっていた。それは、その2人の争い場から遠くへ引き離された所にいた優斗にも見て分かるものだった。
ビィは目の端で優斗がギオによって遠くへ距離を置かれているのが分かったが、目の前にいるこのジマが邪魔で追う事もできずどうにもならない。
「この私が守る陽の国で、よくもやってくれたものです。ユウトさまをこちらへ返しなさい」
ジマは答えず、距離をとりながら、両の手を頭の上に掲げる。
その掌の間と間が光り、たちまちのうちにその光が矢の形になった。それが束となって……それををまっすぐにビィへ向かって放つ。
光の矢は尾を引いてあっという間にビィに届いた。
だが、ビィはそれを表情も変えずに避ける。
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