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変調-3

皇城の敷地外、結界の届かないぎりぎりの場所。そこで、闇の力の発動があった。その力がとても強大だった為か未だ少しその力の欠片が残っていた。 (ここから、何かを掴みとらなければ) 優斗がいなくなった手掛かりはこれでしかない。そっと目を閉じ"何か"を掴もうとビィは感覚を研ぎ澄ます。 すると何かの違和感があった。闇の力の大きさで"それ"は打ち消されたようだったが……。 「この力には、"何か異物"がまざっている」 今まで全く気が付かなかった"力の欠片" (もしやこれは……) これは…ビィはかつてこの力に触れたことがあった"モノ"。 「これは”向こう側の者の力"か?……"異能者"……」 魔の力ではない"これ"は、己の中に眠る力。その断片をわずかにビィは感じた。その断片を感じるとともに、側の木々がざわめいているのが分かった。 ビィは彼らの声を聴く事にした。木々の声を聴くには少しコツがいる。木々のざわめきはとりとめのないものが多く、それを聴き分けるのはとても難しい。彼らの感情は幾らか分るものの、会話ができるまでの木となると少ない。 若い木は、楽しい、嬉しい、悲しいといった単純な感情を表す言葉しか言わない。だけれども、長年生きてきた木には精霊が宿りその能力と同化してある程度の人間の言葉も理解して発することもできる。城外すぐにあった木は長年そこに居た木であって精霊の能力を持ち始めていた。 その木を選んで、ビィは話し掛けた。 .

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