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それが「彼」-3

「え……?」 優斗は一瞬何を言っているのか分からなかった。 (ビィに『印があった』?え?) 頭の中でギオの言葉を反芻してぐるぐると考える。 「そう、ただの魔道士だったのならよかった。魔道士である事を辞めて力を封印すれば済む話だった。でも、彼は既にこの大陸全土で一番の力を持っている魔道士になっていて、容易く辞めることはできない。その退っ引きならない状況の最中に、偶然ソレは起こったんだよ…彼は『向こう側の世界に落ちて行った』んだ」 "それは偶然に" ギオがさらに続けて話す。それを『落ち人』と言うのだといった。 向こう側へ落ちて行く人、そしてこちら側へ落ちて来る人。それを落ち人と呼んでいて、それは、こちら側の世界と向こう側の世界での人々の互いの引き合いで起こるものではない。突然に前触れもなく起こるのだと言う。 「ただ、分かっていることは、異常な磁場による天変地異が起こった時に落ちる人が出る」 「天変地異?って、地震とか…??」 「おそらく?まあ、向こう側の世界はなにかと地震とかは多いと聞く。こちら側はほとんどない」 (そうだったとしても、だったら……ビィって一体いくつなんだ??え?でも向こう側へ行った?ビィって行ったっていってたけど……そういう事だったの?) 次から次へと話があまりにも衝撃すぎて優斗は何を聞いていいか分からなくなった。 「……その話ってか何時(いつ)の話?」 「俺の先々代のあたりの話」 「じゃ、ビィって何歳?」 「こちら側の時間的には200歳は超えていると思う」 「200?え?でも…そんなには見えない」 「彼は、向こう側からこちら側へ戻って来たからね。向こう側へ"落ちて"しまった人は、何処の時間に飛ばされるか予測ができない。向こう側とこちら側は微妙に時の流れが違い、互いにひきあっての行き来……お前とランフィスみたいな……ならば、違和感なくそのどちらの世界の時間軸にも符号してなじめるのだけれども、落ち人は。時を選べない。今よりも過去、下手をすれば未来にも飛ばされかねない。だから彼はもうこちらへは戻ってこないと思われた。だけど……」 .

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