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ビィ-1
ビィは静かに目を閉じる。そしてそっと目を開けてから話し始めた。
「私が落ち人かそうでないかと言えば、落ち人です。おそらく、ギオから言われたのは向こう側へ突然落ちて行って、そして再びこちら側へ落ちてきたと言うことではないでしょうか?」
「……そう聞いた」
「ユウトさまは、落ち人についてはどのように理解されていますか?」
優斗は、ギオから聞いた話をそのまま伝えた。
「向こう側、そしてこちら側の世界へ何の前触れもなく落ちるように行ってしまう人の事だと。互いの引き合いのものによるものではないので、何処に飛ばされるか分からないって聞いた」
優斗はギオが"多分何等かの磁場の影響だと思う"そう言っていたのを思い出した。
「そうです。何処へ行くか分からない。一度向こう側へ落ちてしまうとこちら側へは戻ってくる事は無い。ただ、私が向こう側へ行ったのは、落ちたのではなく、呼ばれたからです。引き合いのようなものだったんですよ」
「…どういう事?」
「……詳しく言うと長いお話になってしまうので、簡単に言えば、向こう側にいる人に"呼ばれ"て向こう側へ行き、そして、向こう側からこちら側へ"落ちて"きて、戻って来たのです」
ビィはまたよくわからない事を言った。
「向こう側の人?」
「そうです。正しくは私の母親です。彼女はとても特殊な能力をもっていた人でした」
「え?じゃあ……お母さんは向こう側の人だったの?」
「……向こう側の"人"ではありませんでしたが……」
なんとなく言葉を濁しているビィだった。
「詳しくは話したくないってこと?」
「いえ、そうではありません。私個人の出自の話になりますので、聊か話がズレてしまいます。機会があればいつでもお話いたしますよ」
「ビィは本当は何者なの?」
「私はビィですよ」
にっこり笑ってそんな煙に巻くような感じでビィは言った。だけど、話さないつもりではないってことなら時間があるときには聞けるって事なのであろうと優斗は理解した。
それじゃあと、優斗は少し躊躇しながら本当に聞きたかった事を聞く事にした。
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