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咎-7
「記憶を消す……ってそんな事できるの?」
「高い能力を持った魔道士ならば記憶を消すことは出来る」
(それは……ビィ?なのか?)
優斗はビィ以外に力の強い魔道士を知らなかった。
「記憶・・・ってその、俺を拐かした記憶を消すってこと?」
「そう。だけれどもそれだけではなく、私と関連付けるすべての記憶を消すこととなる」
「ランフィスの?」
「おそらくレンの心の闇を除くには私との事を排除させなければ心の歪みは消えないということだろう。その歪みを取り除かなければ、これから後もまた同じような事を起こしかねないからだ」
「でもそれって、ランフィスとの子供の頃からのこともってこと?」
(たしかランフィスとレンは幼い頃から、ランフィスがこの城に来てからずっとずっと一緒にいたのではなかった?それをその記憶をすべてって事なの?)
「……そうだ。すべてだ……レンの中に私はいなくなる。レンとのことを知るのは私だけになる」
それを聞いて優斗は目を大きく見開いて言った。
「それって、ランフィスにとってはとても辛いことなんじゃないの?寧ろランフィスのほうがとても辛いんじゃないの?」
優斗は心の中が痛くなって見開いた目から涙が出そうになる。
「……おそらくこれが私に向けた無言の制裁であろう」
(皇子であるランフィスにとっては本来なら関係のない事。と、そう言っておきながら、それなのに制裁というのは矛盾しているんじゃないの?)
優斗はとても理解が出来なかった。
「なんで・・・」
「それで良いんだ」
そう言うランフィスは、とても悲しそうな顔をしているのに口元は寂しそうに微笑んでいるように見えた。
"それが、私の受ける報いだから"
呟く声は優斗には聞こえなかった。
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