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空から-7
まだ良く分かっていない様子の優斗を見てサンガは思わず聞いた。
「じゃ?何だ?お前はタワーから落ちてきた色子じゃないのか?」
「たわー・・・って何です?」
(さっきから何?って聞いているばかりで申し訳ないけど……でも知らないものは知らないし…)
優斗としてもどう答えていいかも分からない。
サンガが少し慌てて言う。
「お前、タワー知らないのか?」
「……はい」
(もしかしたら、知らないって言ってはいけないのだろうか?)
優斗は不安になった。
「じゃ、どこから落ちて来た?」
「……空から落ちました……」
「空からって鳥じゃあるまいし……」
「でも、て…ん…」
ここで、優斗は初めて"天馬に乗って落ちた"という事を軽々と言ってしまうのはまずいのかもしれないと思った。だから改めてサンガに尋ねてみた。
「そうですよね……空は飛べない…ですよね……?」
「空を飛べるのはここいらじゃ魔道士かもしくは天馬に乗る皇族関係のものだけじゃ」
(やっぱり自分の素性が分かる事を言うのは良くないかも)
たしかに、優斗が天馬に乗っていて他に"空を飛ぶ"乗り物は見かけなかった。天馬に乗っていたという事は即ち自分の素性が皇族関係っていうのが分かってしまう。
このサンガという女性が自分の味方なのかどうか分からないうちは。安易に素性が分かる事を言うのは避けたほうが良いかもしれない……優斗はそう思った。
「ふーーーむ。お前、上から落ちたとき何処かアタマでも打って、可笑しくなったか?記憶が飛んだか?」
サンガはそっと優斗の頭を触った。
「……少し熱いか?医者に診てもらうか。お前、少し混乱してるみたいだな」
そう言ってサンガは部屋を出る。どうやら、サンガは優斗が記憶障害が起きていると思ったようだった。
そうして、また優斗は部屋に一人になった。
(……ここがどういった所かなんとなく分かった。遊郭的ななにか…か?)
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