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空から-9
どうやら建物の屋上のようだった。物干し場なのか白い布が沢山干してあった。はためくその洗濯物の布を避けて屋上の真ん中まで出た。何かの大きい物を感じて上を仰ぎ見ると、建物のすぐ裏手に凄く高い建物…ビルがあるのが分かった。
(すごい高い。これ、天馬に乗って見えた一面ガラスでできた建物じゃないか?これがタワー?)
たしかにこれから落ちたっていうのならアリかもしれない。タワーのすぐ真下に優斗がいる建物が建っているようだった。周りも隙間なく低い建物がある。
(こんな高い建物のすぐ下に建ってるなんて危ないよね)
向こう側の世界だとこういう場合はたしか一定の距離を置かないと高層ビルは建てられないんじゃなかったっけ?
そんな事を考えながら、優斗は、その屋上の端に座り、はためく白い布をぼんやりと見ていた。
(天馬から落ちたのはこの建物の近所だったろうか?違う、近くではなかったハズ。風で流されてしまった?……これから俺はどうなってしまうんだろう……)
ここからすぐ出たほうがいいのか、でも、ここから出ても何処へ行ったらいいのかもわからない。ランフィスにどうやって自分の居場所を教えればいいのだろう?と、優斗は不安な気持ちにおし潰されそうになった。
(自分で城に帰れるのならばそうしたい。だけど、ここが一体何処なのか全くわからない)
立ち上がって屋上の手すりのほうへ歩く。手すりはそんなに高くはないので優斗は身を乗り出して、下を見てみた。
狭い路地のような道で、ここと似たようなそんなに高くない作りの建物ばかりで、人通りはまばらだった。
すると、突然。
「あ、あんた誰だ?」
後ろから声がした。
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