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娼楼-4
…
……
…………
「俺はどこも悪くないんだけど?」
何処も痛くも無いし、身体に特に変調も無いはずだと優斗は思ったが、サンガが優斗に記憶の損失があるのではないかと思われて、元いた部屋で医者に診てもらっていた。
医者は優斗の首や頭などを細かく確かめるように診た。
「目立った創傷はないな」
医者はそう言った。それから続けて、
「上から落ちてきたのだとしたなら外傷もないのは極めて運がよかった。落ちた場所がベッドの柔らかい場所に落ちた所為であるかもしれない。記憶の混濁は一時的なもので、ショックによる興奮状態の所為だろうな。おそらく少し熱があるのもその所為だろう。ただ外側だけではわからない、頭の内側にもしかしたならなんらかの損傷があるかもしれない。少し様子を見たほうがよいな。ここ暫くは安静にしておいたほうがよいな」
診断したその結果を話した。
(こちら側の世界は、向こう側みたいに頭の中とか診るなんとかスキャン的なのはないのか?)
そんなことを優斗が考えていると。医者がなにやら出してきた。
(それって?)
「まあ、とりあえず、安定剤を」
「ちょっと待って、それ。注射??」
「大丈夫。ちょっとだけだよ痛いのは。眠たくなるだけで、君は暫く寝ていたほうがいいからね」
優斗はパニックになって、
「嫌だっ!!」
暴れようとしたけど、サンガがヨウを呼びつけてきてがっしり優斗を押さえつけた。
「ヨウっ離せ!」
「ごめんな。でも、お前の身体のためだしな。大丈夫だ。お前注射とかしたことないのか?子供みたいだなあ」
「いやそういうことじゃない!!」
優斗は無理やり服の袖をまくられて、剥きだした肩へと注射を打たれる。
少しのちくっとした痛みが走ったが優斗の不安はそういう事ではなく……
(俺こんなの打たれて、こっちの人の薬とか俺、大丈夫なのか?)
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