168 / 379
娼楼-5
……
………
……………
「はい、終わりだよ」
不安になっている優斗をよそに医者は何事も無いかのように普通に言う。
「だけど、すぐには効かないよ。そんなに強いもんじゃない。強いのは身体に障るからねそういうのじゃない」
医者がそのように言った所為なのか、優斗は少し身体がぽかぽかして来た気がした。行き成りの注射はとても不安でどうなるか怖かったのだけれども、どうやら身体的には今のところは何か変化…呼吸困難とか…そういった事もないので安心した。
優斗はそういえばここに来てから医者のようなものに診てもらってはいないという事に気が付いた。こちらに来てから、目立つような病気に罹っていなかったのもあるが。ギオの所から戻ってきた時に優斗の身体を診たのはビィだった。
(こちらに来てからビィみたいな魔道士が医者を兼ねていると思ってた。でも、もしかしたら、こういった庶民には魔道士に診てもらうというのはしないのかな?)
優斗はこちらの世界では当たり前に知れている事を全く知らないという事を改めて痛感した。
「こいつはタワーの色子らしいが、本人は良く分かっていなくてな。まあ、記憶がおかしくなっているのなら仕方ないな。何か聞いてないか?こんなにも上玉な色子がいなくなったのならば、なにか騒ぎになっているはずだが」
医者はここいらの娼館(娼楼)を診て回っているようでこの辺の事情にも詳しいらしく、サンガが優斗の事を聞いていないか尋ねた。
・
ともだちにシェアしよう!