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娼楼-10
「レイアはな、自分から行ったんだよ」
「自分から?」
「なんだか、分からないがなあ。突然、城へ行くとか言いだして。呼ばれているって言ってな。みな止めたよ」
「あ……」
思わず優斗は短く声を出した。
(たしか、今の皇のバスティンは身体が弱くて、パートナー探しは難航するかと思われたけれども……"パートナー本人が自ら現れた"……って聞いた。そうか。それだ…)
優斗は以前、ランフィスから聞いた話を思い出して
"そういう事か……"
誰にも聞こえないように小さく呟く。
(レイアは突然そうなったのだろうか?俺みたいに。たしか俺は"声が聞こえた"んだ。ランフィスが俺を呼ぶ声が聞こえた)
「どうした?」
「あの、レイア……様は、"呼ぶ声"が聞こえたのですか?」
「なんだ?お前、詳しいじゃないか?なんだ、やっぱり、この辺の事、知っているんじゃないか?」
「……あ、いや、少しだけ知ってたんですが、詳しく聞きたかっただけで……」
(やばい。"呼ぶ声が聞こえた"なんて本人か若しくは親しくしている人、あるいは興味を持って詮索していた物好き……ぐらししか知らないことだったのかも……?思わず食いついて聞いてしまった)
優斗はあせったが、サンガは特にそれ以上は追及はせず、むしろそういった話をするのが好きなのかうれしそうに話しはじめた。
「そうそう、なんだかな、急に、今の皇のバスティンが呼ぶってな。ああ、当時は皇子だったがな」
「バスティン"様"だろう?サンガ」
医者のジンがたしなめる。
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