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様々な人々-2
「そんなこと言ってると、またミハナ姐さんに悪く言われるよ?」
ヨウはミハナの贔屓の客に対して、軽口を叩いているのを見咎められてリナが虐められたりしたらと思って言った。
「あら、大丈夫。だって私のほうがこれからどんどん売れっ子になるし」
この世界は売れっ子になれれば、何をしても咎められることもなくなる。ミハナはイハクが優斗に興味を持ったことに対して怒って部屋に戻ってしまっていた。だから、リナのこんな態度もミハナに見過ごされている。
「そうだね、きっとリナはこれからどんどん売れっ子になるよ」
イハクは軽く相槌をうつ。
「じゃあ、イハクさん。次からミハナ姐さんじゃなくって今度はリナを選んでくれる?」
うーん?とイハクはうなって、答えを考えあぐねていると、ヨウが思い出したように言う。
「そうだ、イハクさん、あの落ちてきた色子のとこに医者が来たよ」
「あいつっていうか、もう大丈夫なのか?」
「取りあえずは。まあ色々診てもらって身体には問題はないみたいだ」
「そうか、じゃあ、それなら早速、ユウトに会いたいな」
「それは……まだ分からないな。サンガ母さんに言わないと。ユウトはまだ寝ているし」
「ええ?いいじゃない?俺、ユウトを貰いたいって言ってるし。ねえ。今、何処にいる?部屋?」
「それはダメだよ。サンガ母さんに言わないと」
そんな会話をしていると、話の途中で割りこまれたような形になったリナがものすごく不機嫌になっていた。
「ちょっと、ヨウ?なんであんたが割りこんでイハクさんと話すわけ?今はあたしと話していたんでしょ?」
ヨウに食って掛かる。
「いや、ごめんなさい。早くイハクさんに伝えたいだけだったから」
「ヨウ?あんたさあ、ちょっと最近、いい気になってない?」
「なんでそうなる?」
「下女のクセにさぁ、何、イハクさんに色目使って話すわけ?」
ヨウはこうやって娼妓に馬鹿にされるのは慣れていたので軽く流してはいたが"色目をつかう"とか言われたのはあまりないので少し驚く。
「色目とかそんなわけないじゃないか。そういうわけじゃないよ」
「ふん?どうだか?」
「いやちがうよ?なんでこの私がそうなる?」
近くにいた下男の1人がまあまあと諌めていたが、なんだかさらにヒートアップしそうだった。
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