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様々な人々-4
イハクは静かに中に入る。ベッドには人が寝ている気配がして、脇にある小さな机に灯りがぼおっと光っているのが見えた。その灯りを頼りにそっと近づいていくと静かに眠っている優斗がいた。
(やはりここにいた…)
"ほぉ……"
イハクは思わず囁く。
(…とても綺麗だ……)
最初会ったときは吃驚してあまりよく見るとかそういう事はできなかったから、こうやってよく見ると本当に
"いい…"
イハクはやっぱり優斗を貰いたい、どうにかしてサンガ婆さんに了承を取りつけないと…と思う。
(実際、こいつはサンガのとこにいた色子ではないし、身請けというほどでのお金はいらないだろう。それに……)
イハクは近々、宮廷に上がって今度お披露目をする皇子のパートナーの肖像絵を描くことに決まっていて多少のお金は入る。イハクだけではなく腕のいい何人かの画家が選ばれたのだけれども、そこで、一番と認められた画家が宮廷画家となるというわけだ。
(そこで、自分が大々的に宮廷画家に選ばれればさらにお金が入るしな……)
イハクは自分が選ばれると疑ってはいなかった。何を根拠にそう思うのかよく分かってないけれども自信だけはあった。
最近では器械でまるで写し取ったみたいに写実的な絵も出来るのに器械絵はなんだか安っぽい印象があるのだろう。皇宮ではまだまだ画家の描いた絵が使われる。
イハクは皇子のパートナーもとても綺麗だと聞いてはいた、まだどんな人なのか全く知らなかったけれども肖像画を描くのをとても楽しみにしていた。
だけど、この"優斗"は仕事とかではなく自ら描きたいと思った。
(じっくりと描きたい。久々だよねえ。こう思うのは)
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