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イハク-1
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今、イハクはとんでもない誘惑に取りつかれていた。
静かに眠っている優斗を見ながら、サンガに許可を得ないで、このまま連れ出したら?……という誘惑だった。
(まあ、無理だな。こいつを担いでここを出る?いくら華奢だとはいえ、寝ているこいつを運び出すとなると大変だし)
イハクがしばらく見ていると、優斗が薄くそっと目を開いた。
"起きた……?"
目が合ったので、イハクは微笑んで見せた。
"……うゎ・・"
優斗は吃驚して小さく声を出す。
「……誰?……」
優斗は混乱していた。目の前のこの男は誰なのだろうと思っていた。それもそのはずで、優斗は落ちて来た時には気を失っていたしイハクを見たのははじめてであったからだ。
「誰ってなあ。そうだよなあ。お前、落ちて来た時は、気い失ってたもんなあ……お前さあ、俺の寝ていたベッドの上に落ちて来ただろ?」
「……あ……そうだったんです……か?」
その会話の中、優斗はだんだんと思い出してきた。
(……そうか、俺、天馬から落ちて……それで、サンガっていう人に医者にみせられてそれから……。たしか薬かなにかで眠らされていたはず。時間そんなに経ったのかな?それともそんなに薬が効かなかったのかな?)
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