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イハク-4
「いや、俺が言っているのはそういう事じゃないんだけど…」
(そういう事じゃなくて……。この買うっていうのは、人身売買的な"買う"……だよね?)
優斗は普通にそんな話をしている事に衝撃を受けていた。迷っている場合でもないかもしれない。このままここにいたとしても、城に戻れる保証もない。だったら……。
信頼できるかどうかなんてわからないけどイハクに付いて行ったほうが、ここにいるよりかはマシなのかもしれない。
だから、優斗はイハクの提案に乗ることにした。
だけれども、優斗はこの時、自分が買われるという事がどんな事なのか深く考えてはいなかった。
「サンガ婆さんがいないうちに行こう。起き上がれるか?」
「うん。大丈夫」
(俺は絶対にランフィスのところへ戻らないといけない。だって、俺とランフィスにしか『陽の力』は出せないんだもの)
もし闇の力がまた大きくなったのならば、夜が賑わうこの街はあっという間に廃れてしまうのではないだろうか?優斗はそう思った。
「……イハクさん」
「イハクでいいよ。さんとか付けんな」
「ではイハク、約束して、もし、この俺が何処の誰って分かっても絶対に他所には言わないで欲しい」
「……何?お前、ヤバイやつなの?」
「そういう理由ではないけど、だけど、この俺に何かあったなら多分、いや絶対にやばいことになる。ここも、イハクもそしてサンガさんも」
「………?どういう事?」
イハクが戸惑っていると、優斗は小さく言った。
「俺は神の加護があるらしいから……」
「なんだ、それ?」
それは、あながち嘘ではない。優斗には神に選ばれた印もあるし、それをもってすれば、本来ならランフィスを感じることが出来るはずだった。……が、前のようにランフィスを"呼んで"みてもランフィスを感じる事が出来なかった。呼応はしなかった。
優斗はそれがとても不安だった。
………
……
…
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