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イハク-7

イハクに抱きかかえられていたのだった。 「ごめんなさい。重たかったよね?」 「いや、お前は軽いからそのへんは大丈夫。ほんとはこのまま、抱きかかえていて家に入りたかったんだけどな。さすがに両手がふさがってだと、ドアの鍵も開けられないし」 イハクは優斗をそっと地面に降ろした。イハクの家が目の前にあった。アパートやマンションみたいなものではなく、所謂一軒家だ。この辺りは高い建物はあまりなく、あのタワーみたいな建物は数軒しかない。あとは殆どが低い建物だった。 四角い形の家を見て、優斗はこの形の家が普通なのだろうか?と思った。 周りはそんなにも家が立ち並んではいなかった。 (娼楼のあった街中よりももっと郊外なのかな?) 優斗が辺りを見回すと、森が直ぐ側にあった。 「森の近く・・なんだ」 「ああ、ここはあの店よりもだいぶ離れている、街中はいいけど俺は住まいは静かなほうが好きだからな。静かなほうが仕事に集中できるしなぁ…」 「仕事……?」 優斗がそう言った時、イハクは家のドアを開けた。 イハクにどうぞと言われ、優斗が中に入ると、行き成り、何かの油のような、シンナーのような、それらが入り混じった臭いがしてきた。 「これ……」 優斗はこの臭いを何処かで嗅いだような気がした。 (…ああ。これ、美術室で同じ感じのものを嗅いだことがある。これって……)  「絵具の臭い???」 そうだこれは油絵具の臭いだ。思わず優斗はイハクに聞いた。 「よくわかったね?絵とか興味あるの?」 学校で美術部の友達がいて優斗は時々部室に遊びに行ってたのもあるし……。だけど、美術室というのはそもそもこういう臭いがするし、でもこの話はむこうの世界の事だから。それをどう上手く説明したらいいのか優斗は困った。 .

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