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イハク-9
「候補になったんだ。それなりに箔がつく。そのおかげで、今からかなり仕事が入っている。この前まで、この先の金持ちの家で、部屋に置く大きな屏風に絵をたのまれてずっと制作してた。それでかなりのお金もはいってきてるし・・・」
戸惑っている優斗を他所にイハクは構わず話す。
「ユウトを見たときにさ。すっごい描きたいって思ったんだよ」
優斗の頭の中がぐるぐる回る。これは、このイハクに自分のことをきちんと知らせほうがいいのだろうか……。
(でも、言った所で信じてくれる?)
「それでさあ・・・」
そう言ってイハクは行き成り、また優斗を抱き上げた。
「え……何?」
優斗を姫抱きにして、イハクはそのまま衝立の奥へ行く。そこはやはり、寝室で、一人では寝るのには少し大きいサイズのベッドがあった。
イハクはそこへどさっと優斗を置く。優斗が思ったよりもベッドは柔らかくて乱暴に置かれてもまったくダメージはなく、そのままベッドに沈み込んだ。
「なあ、いいだろう?このベッド。俺、ベッドはこだわってるんだ、だって寝るのって大切だからね」
そう言いながら、イハクは優斗に覆いかぶさる。
「……お前の絵を描きたいって思った・・だから・・さあ。ユウトを知りたいし。抱きたい……まあ、その為にお前を買うって決めたんだけど」
「……ちょっと。待っ・・」
抗議の声を上げたが、その声を出す前に口づけをされて声を出せなかった。
"やばい・・これってやばい・・"
そこで優斗はそこで初めて自分が『買われる』という事がどういうことか分かった。
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