205 / 379
呼応-9
「ねえ。イハク、ランフィスがここに来るみたい」
「え?」
「ランフィスの気配がした。天馬だったのならここに来るのは早いよね」
本当にランフィス皇子がやってくるのだろうか?イハクは何処か現実味がなかった。
(だってあの皇子のランフィス様だぞ?)
イハクがどうしていいか分からずに狼狽えていると、優斗は
「外に出てみようかな?」
そう言ってイハクの家の玄関へ向かった。
「あ、待ちなって。外、もう寒いよ、ここ森も近いしすぐ寒くなるから…ちょっと待ってろ」
と言ってイハクは、奥の部屋から軽い何かふわっとした素材でできた上着をもってきて優斗に羽織らせた。でもイハクのだからか優斗には少し大きかった。
「あ、ありがとう」
「まあ皇子様のパートナー様に風邪でもひかれちゃ俺がやばそうだしな。ああ…大きかったなあ。それしか優斗に合うのはなかったからなあ」
と言って軽くイハクは笑った。
外へ出ると冷たい風も出ていてやはり肌寒くなっていた。イハクから上着を借りてよかったと優斗は思った。
いっしょに外の様子を見に出てきたイハクの長い濃い茶色の髪が風でふわっと流れた。家の中だと優斗はそんなに気にも留めてはいなかったけど風に流されたイハクの髪は綺麗だなと思った。
「イハクの髪って綺麗だね?」
思わず優斗がつぶやくとイハクがほんとにぶわっという感じに大笑いをした。
「なんだそれは?そんな俺の髪なんて伸ばしっぱなしのやつだし。それを言うならユウトのほうがよっぽどだろう?」
そんなたわいないことを話していると、上から羽搏きと嘶きの音が聞こえた。
.
ともだちにシェアしよう!