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呼応-11
(……よかった…戻ってこれた…ランフィスの所に……)
優斗はそっと目を閉じる。
……ものすごくほっとする。
(そういえばずっと気が張っていた)
優斗は自分がとても疲れている事に気が付く。
(天馬から落ちてしまってからどのぐらいの時間が経ったのかな?でも、昼過ぎからの出来事だからそんなには時間は経ってはいないはず。こちらの世界の時間はよくわからないや……)
こちらの世界に来てから今まで時間を気にする生活は優斗はしていなかった。何かしなければいけない日時は侍女が知らせて来たからだった。
(そうだよね。こちらの世界は……。向こう側の世界とは違う……)
すると、いきなり、大きな声がして驚いた優斗はそちらの方を振り向いてみた。
「……イハク?」
イハクが両脇を特別警察らしきものたちに固められてなにやら揉めているのが見えた。
「待って!ランフィス、イハクをどうするの?」
「あの者はユウトを攫ったものだろう?だから特別警察によって拘置するんだよ」
さらっと言ったランフィスに優斗は驚いて
「待って!!イハクは何も悪くない!!だってイハクはサンガのとこから連れ出してくれたんだよ」
「サンガという者から聞いた話では、あの者がお前を攫ったと言われたのだが…?少し齟齬があるようだ…」
ランフィスが優斗に確認するようにそのあらましを聞いた。だから優斗は一生懸命言葉を選びながら説明した。
"サンガは俺を色子として扱おうとしたんだよ"
"でも、それは俺がはっきり身分を言わなかったから仕方がないことなんだ"
"あの娼楼に落ちたんだ。主人であるサンガの言うように色子として扱われても文句は言えない。色子になったらあそこからずっと出れないって"
「……だからイハクが連れ出してくれたんだ」
ちょっと支離滅裂な感じだけれども……誰も罪に問われないように、イハクも、もちろんサンガも悪く捉えられないように……
誰も自分の所為で不幸な目に合わないようにと。
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