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呼応-12
どうしたらイハクの印象をよくしたらいいのかと優斗は必死で考えて、さらに優斗は重ねて言った。
「……イハクは本当にいい人なんだよ。ほら、これ、この上着。ランフィスが来るって分かって、外に出ようとしたら、外はもう寒いからってわざわざ部屋の奥から出してくれて羽織らせてくれたんだよ?」
優斗はイハクが羽織らせてくれた上着の襟を少し掴んでランフィスに示した。
ランフィスはじっと優斗の話を聞きながら考え込む。
(あのサンガという者が言う事とは違うようだ。何方かが嘘をついているのか、それとも、その何方とも嘘ではないのか……。いずれにしても、ユウトがこのイハクという者もそして、サンガという者も擁護したいというのは分かった)
"……だったら、自分は優斗を信じるまでだ"
ランフィスは特別警察にイハクの拘束を解くようにと言った。
「すまなかったねイハク。あなたは私のパートナーにとても良くしてくれたんだね」
拘束を解かれたイハクはその両腕を摩りながら慌ててランフィスに膝まづいて頭を下げる。
「いえ、良くした…というか…」
(どっちかというとユウトを買おうとしていたんだけれどもな)
と、そんな事はイハクは到底言えるはずもなく、ここで言い淀んでは印象が悪くなるかもしれないと思ってかなり焦っていた。
「それと、悪いがあの上着をこのまま貸してくれまいか?こんなに遅くなっては天馬に乗って空を行くには寒いから。後からあなたと、あとサンガには何らかの謝礼をしますから」
「あんな上着でよければ……謝礼などはいりませんので」
「……では礼ではなく、何か他にあれば……」
イハクはしばらく考えてから、
「……それでしたなら……」
下げていた頭を上げて、ランフィスの顔を見た。間近で見るランフィスは本当に"見目麗しい"という言葉通りの容姿だとイハクは思った。
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