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茶色の-2
「……猫?……」
思わず優斗は呟く。近づいてよくよく見れば、それは猫だった。
茶色の、ふさふさした長毛の可愛らしい猫。長毛だからか少しころころしている感じだった。庭に植えてある優斗の好きな薄葉花の花びらが散ってそれがキラキラ風に舞っているのを、楽しそうに追いかけていた。
猫が飛び跳ねるたびにその花びらもくるくる回ってさらに猫が飛び跳ねるという繰り返しだった。
「君は何処から来たの?この前もいたね?この庭が好き?」
静かに優斗が近づく、猫は一瞬、警戒して動きを止めた。けれどもすぐ近づいてきて、優斗がその鼻先にゆっくりと指先を差し出すと、鼻を近づけてきた。そして、顔をすりすり手に擦り付けてきて、それからすぐに足元にも絡みついてきた。
優斗を見上げながら
"ニャー"と鳴いた。
「やっぱり猫だよね?」
"ニャー"
まるで返事をするように鳴く。とても人懐っこいのでやはり誰かが飼っているペットなんだろうと優斗は思った。
猫にしては何となく違う気もしたけれども、こちらの世界の猫だからかもしれないかもしれないとも思った。
茶トラとかではなくって本当に明るい色の茶色一色の長毛の猫で、毛並みも綺麗だった。
「君は誰かに飼われているの?」
そう話しかけてみると。
「ニャーミャウャウ」
と何やらすごい鳴く。
「君は言葉がわかるみたいだね?」
"ミャウウー"
優斗を見上げ、ニャーとかミャーとか色々な鳴き声をあげて何やら必死に話しているようにも見えた。
(威嚇とかもしないし、この人なつこさは、やっぱり誰かが飼っているんだろうな。野良猫が結界が掛かっているこの場所にはこれないはずだし。誰かが飼っていてここまで来たのかな?)
「侍女の誰かが飼っているのかな?んー。でもここにいると、きっと怒られちゃう?」
飼っている猫が皇子の部屋の庭に入りこむとか知れたら、その侍女は何かしら叱責があるかもしれない、もしかしたらとんでもない罪になるのかもしれない。
(でも、ここにいるのを知っているのはきっと今、俺だけだから、俺が言わなければ大丈夫……?かも?一旦保護して、後で侍女の人に聞いてみよう)
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